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【連載第9回】
糖尿病のシックデイ・ルールとは

2006/06/09

【質問】
経口薬服用中の糖尿病患者が熱を出しました。どんな点に注意すればよいですか。
【回答】
2型糖尿病患者であっても“シックデイ・ルール”の指導徹底を。

 糖尿病患者が治療中に発熱、下痢、嘔吐などを来す、または食欲不振のため食事が取れないときを「シックデイ」と呼ぶ。このような状態では、2型糖尿病で血糖コントロールが良好な患者であっても、著しい高血糖を来したり、糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)に陥ることがある。1型糖尿病患者ではDKAの危険性がさらに高いので、特別の注意が必要である。従って、シックデイ時の対応の原則(シックディ・ルール)については、患者とその家族に、普段から十分に説明・指導しておくことが重要である。

1. 1型糖尿病におけるシックデイ・ルール
 1型糖尿病の場合、「シックデイであっても、インスリン注射は継続すること」が絶対的なルールである。1日4回以上のSMBG(血糖自己測定)を実施する。以下、「糖尿病専門医研修ガイドブック」に記載されているシックデイ・ルールを示す(参考文献1)。

1)食事摂取が通常量の2分の1以上、可能な場合
 血糖値200mg/dL以上-超速効型インスリン10%増
 血糖値300mg/dL以上-超速効型インスリン20%増
 血糖値400mg/dL以上-超速効型インスリン30%増
 血糖値 80mg/dL以下-超速効型インスリン10%減
2)食事摂取量が通常の3分の1以下のとき
 通常量の2分の1のインスリンは必要であり、その量に、SMBGの測定結果に応じ上記の量を追加する。例えば、通常、ノボラピッドを毎朝16単位注射している患者で、ほとんど食べられない場合には、8単位を基本とし、SMBGで朝の血糖値が320mg/dLなら20%追加して、計10単位を注射する。
3)睡眠前の中間型インスリンは、食事量に関係なく注射する。睡眠前血糖値が400mg/dL以上のときには、超速効型インスリン2~4単位を追加注射する。
4)食事がほとんど取れないとき、SMBG高値が続くとき、発熱、疼痛、嘔吐、下痢などが強く24時間以上続くときには、すぐに救急外来を受診する。

2. 2型糖尿病におけるシックデイ・ルール
 基本的な指導の原則としては、以下の3点が挙げられる。
1)吐き気、嘔吐などで食事摂取ができるか分からないときは、インスリン注射を「食後」注射に変更する。
2)食事摂取量が通常の半分以上なら、インスリンは通常量を注射し、食事摂取が半分以下なら、インスリンは2分の1量を注射する。
3)注射量に迷うようなら、遠慮なくかかりつけの病医院に連絡するように患者に話しておく(必要に応じて、携帯電話の番号なども教えておく)。

 シックデイ時の内服薬に関しては、以下のようにする。
1)α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬は、シックデイで消化器症状がある間は服薬を中止する。
2)インスリン分泌促進薬(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬)に関しては、食事摂取量が半分程度なら半量とし、摂取量が3分の1以下なら服用を中止とする。
 表1に、「糖尿病治療ガイド2006-2007」に記載されているシックディ・ルールを示す(参考文献2)。なお、嘔吐・下痢が止まらず食物摂取不能のとき、高熱が続き尿ケトン体が陽性、血糖値が350mg/dL以上のときは、早急な入院加療が必要である。日ごろから、常勤の糖尿病専門医がいて、シックデイ時の救急入院・治療が可能な地域の病院を、日本糖尿病学会のサイトなどでリストアップしておくとよいであろう。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター内科副部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。研修後、成田赤十字病院などを経て、2002年4月より現職。

連載の紹介

【臨床講座】誰にも聞けない糖尿病の基礎
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