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連載第3回
インスリン抵抗性改善薬を使いこなす

2006/04/21

【質問】
肥満患者の血糖コントロールが思うようにいかず、困っています。

【回答】
HOMA-Rなどの指標を使い、まずは「インスリン抵抗性」の評価を。

 今回は、食後高血糖(200mg/dL以上)だけでなく、空腹時高血糖(130mg/dL以上)も認め、かつインスリン抵抗性が認められる場合の薬物療法について解説する。

 インスリン抵抗性とは、血中インスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない(=インスリンが効きにくい)状態をいう。その原因として、インスリン拮抗物質の存在、インスリン受容体数の減少、インスリン受容体を介する細胞内への情報伝達能力が低下した状態などが考えられている。

 最近、肥満(特に内臓肥満)に伴って脂肪細胞が大型化すると、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンと呼ばれる善玉サイトカインの分泌が低下することが分かった。アディポネクチンは、インスリン感受性増強作用、抗動脈硬化作用、抗炎症作用、血管平滑筋や血管内皮細胞の増殖抑制作用などを有する。アディポネクチンの分泌低下によって、インスリン抵抗性が生じ、高血圧や耐糖能異常、動脈硬化症が発症・進展すると考えられている。そのため、肥満がある患者では、食事療法と運動療法による減量(内臓脂肪の減少)が、特に重要となる。

 日常診療においては、以下の4つの指標によってインスリン抵抗性の有無を評価するとよい。

(1)HOMA-R(インスリン抵抗性指数)
 HOMA-R=〔空腹時インスリン値(μU/mL)×空腹時血糖値(mg/dL)〕÷405
  1.6以下:正常
  2.5以上:インスリン抵抗性
 HOMA-Rは、簡単な計算でインスリン抵抗性の有無を判定するために使われる指標の一つである。特に、早朝空腹時血糖値が140mg/dL以下の場合には、グルコースクランプ法や経静脈ブドウ糖負荷試験のミニマルモデル解析などスタンダードとなっている評価法との相関が高く、信頼性が高いとされている。空腹時血糖値が140mg/dLを超える場合には、その解釈に注意が必要である。

(2)空腹時インスリン値
 早朝空腹時のインスリン値が15μU/mL以上の場合。

(3)肥満
 BMI 25以上の肥満(特に内臓肥満型)

(4)メタボリック・シンドローム(表1)
 肥満・高血圧、あるいは高中性脂肪血症・低HDLコレステロール血症では、インスリン抵抗性の存在が疑われる。

 上記指標のうち一つ以上を満たす「インスリン抵抗性主体型」には、インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド薬、チアゾリジン薬)を使用する。この型の患者では、食事療法や運動療法の再指導、徹底も重要である。どちらの薬剤を使用するかは、表2に示す、各薬剤の特徴、副作用、禁忌などを考慮して決定する。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター内科副部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。研修後、成田赤十字病院などを経て、2002年4月より現職。

連載の紹介

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