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第3の地雷 IVHや外科手術に潜む失明のリスク

2007/10/30

 交通外傷で整形外科にしばらく入院していた患者が、「何となく見えにくい」ということで眼科に紹介されてきた。もう手術後の状態も安定し、明日退院とのこと。そのころ研修医に成り立ての私は、ようやく眼底検査ができるようになったばかり。のぞいた眼底に見えるのは、どう見ても雪だるまにしか見えない白い玉状のもの。「変なものがある」と先輩医師に回したところ、「真菌性眼内炎だ。えっ、 今日退院? じゃ、眼科に転科ね」と、そのまま眼科へ入院となった。

 この症例は中心静脈栄養IVH)による真菌性眼内炎であり、合併症として既に教科書レベルの話となっている。もっとも、「IVH施行中に視力低下、飛蚊症の訴えがある場合には眼科受診を」と簡単には言えるのだが、IVHは全身状態が悪い場合に施行していることが常。回復期になって視力低下を患者が自覚したころには、既に眼科的治療をしても視力回復が難しくなっていることが多い。

 診断がつけば、抗真菌薬の全身投与、あるいは最近では硝子体手術を行うことがあるが、全身状態がそれらの治療に耐えられないことも多い。どう治療するかは主疾患を担当する診療科と眼科との相談になる。眼科がない病院や、留置型のIVHで在宅治療をしている場合、まだまだ対処は難しい合併症だ。

 このように、眼科以外の治療によって起こる目の合併症はなかなか厄介だ。全身麻酔が終わってみたら、失明していたという例もまれではない。原因はいくつかあるが、多いのが、腹臥位での手術中による眼球圧迫だ。さらに最近では、硝子体内に膨張ガスを注入していた場合に、麻酔の笑気ガスが膨張を増強し、網膜中心動脈閉塞症を起こし失明した症例の報告がある。

 黄斑円孔や網膜剥離などの術後に網膜復位を目的として、硝子体中にSF6(6フッ化硫黄)やC3F8(8フッ化プロパン)を注入することがある。これらのガスは空気中の窒素と結合して膨張し、治療効果を上げることができる。注入後はゆっくりと消失していくのだが、飛行機で室内の気圧が減少したり、笑気ガスで麻酔をしたとき、これらの気体は著しく膨張する危険がある。

著者プロフィール

石岡 みさき(みさき眼科クリニック院長)●いしおか みさき氏。1989年横浜市立大医学部卒。93年米ハーバード大スケペンス眼研究所。96年東京歯科大市川総合病院。98年両国眼科クリニック勤務。2008年より現職。

連載の紹介

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非専門医でも、眼の診療を行う機会は多いもの。しかし、“ついで”に出した点眼薬が重症化や副作用の見逃しを招くなど、トラブルの種はそこここに潜んでいます。眼の診療で最低限注意すべきポイントを紹介します。

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