今回からは、MAPSOのAにあたる、不安障害(Anxiety Disorder)の診かたについて学んでいただきます。
後述しますように、身体的な愁訴のために内科医・プライマリケア医の外来を受診する不安障害の患者は非常に多く、本連載第5回で説明したうつ病(大うつ病性障害)と共存する頻度も高いので、PIPC(Psychiatry in Primary Care)の実践には必須の疾患群です。
■G-POPS:不安障害の5つのタイプ
PIPCの創始者であるロバート・K・シュナイダー先生は、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-IVに記載されている不安障害を、シンプルに5つのタイプに整理しました。
- Generalised Anxiety Disorder(GAD) 全般性不安障害
- Panic Disorder(PD) パニック障害
- Obsessive Compulsive Disorder(OCD) 強迫性障害
- Post Traumatic Stress Disorder(PTSD) 外傷後ストレス性障害
- Social Anxiety Disorder(SAD) 社交不安障害
日本のポップ・ミュージックはJ-POPで、韓国のポップ・ミュージックはK-POPですね。だったら、ドイツのポップ・ミュージックはG-POPなのかどうかはよく知りませんが、不安障害の5タイプの頭文字を並べると「G-POPS」となります。さあ、もうこれで覚えちゃいましたね。MAPSO問診シナリオにおける「不安障害」のパートは、このG-POPSの順番で各々の質問が配列されています。これに従って問診していけば、各タイプをもれなくスクリーニングできます。
■なぜ、プライマリケアでは不安障害が重要なのか
わたしたち内科医/プライマリケア医が、不安障害を避けて通れない理由は、以下の3つです。
- 内科医・プライマリケア医の外来では、不安を有する患者の頻度が、医師の想像以上に高い
- 患者の不安の内容を理解すると、患者との「つながり」が得られる
- 不安障害は薬物療法(SSRI/SNRI)が有効であり、内科医・プライマリケア医でも対応可能な患者が多い
表1にプライマリケアにおける不安障害の頻度を示しました。このデータはアメリカ人によるものですが、わが国における頻度も大きな違いはないものと思われます。