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【連載第4回】実践篇(2)
「涙ぐむ」「物忘れ」で発見されるうつ病も

2008/03/25

 精神科医がうつ病を診断する際は、次の3つの軸に注目するのが一般的である。

(1)抑うつ気分
 憂うつ、寂しい、悲しい、自分を責める、孤立感といった気分があり、その程度も強く、長く続いている場合である。ひどい場合には「もう死んでも構わない」といった希死念慮も見られる。診断のポイントは、客観的には「それほど深刻にならなくてもいいのに」と思える状況でひどく悲観的になり、しかも周囲の理解や励ましに耳を傾けられない、という点である。涙ぐむことが多くなるのも特徴の一つである。

(2)精神運動抑制
 精神運動抑制とは、「精神機能の抑制」と「運動性の抑制」を合わせた総称である。

 精神機能の抑制では、忘れっぽい、覚えることが苦手になる、頭が早く回転しない、自分では決定できない、集中力がなくなるといった軽い認知症に似た症状が出現する。実際、「主人が最近ぼけてしまったみたいで…」と、奥様がご主人を連れてきて、面接してみると精神機能の抑制が前面に出たうつ病だったという事例もある。こうしたケースは「仮性痴呆」と呼ばれる。

 これに対して、運動性の抑制とは、何もやる気にならない、おっくうである、面倒である、などの症状をいう。一般に、「うつ病では、病状が悪いときは自殺の心配はないが、少し良くなったときが危ない」といわれるのは、悪い状態では運動性の抑制があるため「死ぬ気にもならない」からである。

(3)身体症状
 うつ病では身体症状が見られるため、内科をはじめとした身体科を受診することが多い。うつ病の身体症状には、食欲不振、体重減少、頭痛、頭重感、腰痛、肩こり、不眠(特に早朝覚醒)などがある。そのため、検査をしても異常所見が認められない身体症状では、うつ病を疑った方がよい。こうしたうつ病は、身体症状という仮面を被ったうつ病という意味で、「仮面うつ病」と呼ばれることがある。精神科医以外への啓発として使われる言葉である。

著者プロフィール

保坂 隆(東海大学医学部教授・精神医学)●ほさかたかし氏。1977年慶應義塾大学医学部卒。82年東海大学病院精神科助手、93年に同講師。2000年に同助教授を経て、03年から現職。

連載の紹介

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