日経メディカルのロゴ画像

時代遅れになった「退院支援」

2019/09/20
樋口 昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)

 今回は、新しい退院支援の形についてご紹介します。

 先日、ある急性期病院の退院前カンファレンスに参加させていただく機会がありました。病院に行ってみると、患者さん本人やご家族、担当ケアマネジャーがテーブルを囲みながら戸惑った表情を浮かべていました。彼らは、見知らぬ訪問看護師が退院前カンファレンスの場にいたことに驚いているようでした。

患者家族「えっ、この方はどちら様ですか?」
主治医「当院付属の訪問看護ステーションの看護師、○○です」
患者「自宅へ看護師さんに来てもらわないといけないほど、私は具合が悪いのですか?何も聞いていません。〇〇さん(ケアマネジャー)は知っておられたのですか?」
ケアマネジャー「いや……」

 ケアマネジャーは、自分も訪問看護師が退院前カンファレンスに同席することを聞いていませんでしたが、今後の関係性を考えると病院側を悪者にする訳にもいかず、「あっ、まあ、先のことを考えるといつか必要になることもありますから……」と、しどろもどろの弁明。

 後で確認すると、カンファレンスに訪問看護師が同席するよう、この急性期病院の医療ソーシャルワーカーが手配していたようです。「必要な支援をテンポよく導入していくためは、なるべく早いうちから訪問看護を入れておく方が良いから」との考えだったようですが、事前に患者本人やご家族、そして担当ケアマネジャーに退院後の訪問看護の必要性とカンファレンスへの同席について了承を得ていなかったため、参加者がみな戸惑っている状況でした。

スピード重視し「関係者に承諾とる時間ない」
 このような場面は、退院支援の場ではいまだによく見受けられます。急性期病院では、DPCや平均在院日数に対する制度上の制約、病院経営の観点から、「退院支援」を強化し、入院期間をどんどん短縮しようとしています。

 急性期病院の医療ソーシャルワーカーの立場で言えば、医師から退院の指示が出ると同時に、スピード感を持って退院のための調整を進めることが使命になります。医療ソーシャルワーカーの中には、冒頭のケースのように、院内ベッドの回転率をアップさせるために「事前に関係者に承諾を得ている時間はない」と考える人も少なくありません。結果的に、患者さんもご家族も、自宅への退院のために必要な準備が十分にできないまま、バタバタと急に退院することが多いのが現状です。

 こうした課題を解決するために、2018年度診療報酬改定では、「退院支援」ではなく「入退院支援」という考えを強調した加算点数が新設されました。「入院時支援加算」「入退院支援加算」を新設することで、入口の段階から退院をイメージするような入退院支援の体制構築を促しており、「地域包括ケアへ繋げる」というメッセージ性の強い改定だったと言えるでしょう。

入院前から退院後の生活をイメージ
 この流れは、急性期病院は入院期間を縮めるためだけではなく、患者さんが入院する前から全身状態やその家族環境を把握し、退院後の生活までイメージした上で入院診療計画を立てなさいということです。そして急性期病院は、退院後にいわゆる在宅療養を担うのは当然のこと、本人とそのご家族を主役として外部の在宅医療・介護その他関連事業所としっかり協働して、患者さんが安心して退院後の生活を行えるよう、入院前から支援することが求められています。

 現場はまだまだ追いついていない印象ですが、遠くない将来、病院主導の急な退院や、治療日数だけで半ば機械的に作成していた退院計画については、見直さざるを得なくなるでしょう。

著者プロフィール

樋口昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)●ひぐちまさよし氏。社会福祉法人関西福祉会を経て、2000年に社会福祉法人福祥福祉会(豊泉家グループ)に入職。特別養護老人ホーム施設長、法人運営本部・営業本部長を経て、13年にグループ内の医療法人成和会・博友会に異動。両法人の法人本部長兼副理事長に就任し、病院マネジメントに従事する。

連載の紹介

医師が知らない介護の話
地域包括ケア推進の流れの中、医療現場において、医師が介護系職種と関わったり、介護側の実情を鑑みた上で対応しなければならない機会が増えています。医療界と介護界の双方に関わる著者が、医師が知っておくと現場で役に立つ介護業界の内情を綴ります。

この記事を読んでいる人におすすめ