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「医師に口出ししてよいのか」ケアマネの苦悩

2019/01/30
樋口 昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)

 在宅医療を担当する医師と急性期病院の医師とでは、治療に対する考え方や判断が違うため、どう対応すればよいのか分からない――。両者の板挟みになり、悩んでいるケアマネジャーは少なくありません。

 今回は、現場でよくある悩ましいケースを紹介させていただきます。

 ケアマネジャーAさんは、11年前から在宅サービスを利用している90歳の男性Bさんを担当しています。Bさんは、要介護5でベッド上で寝たきりの状態。妻と、発達障害を抱える長男との3人暮らしです。長女は結婚し、東京に住んでいます。

 Bさんは、訪問介護を利用して、排泄・食事・更衣介助などのサービスを受けており、訪問看護では、褥瘡処置、尿道カテーテル管理、内服管理などのケアを受けています。また、訪問診療については、約50年間かかりつけの近所の内科診療所で80歳代の医師に診てもらっており、褥瘡については、皮膚科医による訪問診療を受けていました。

 ある日、Bさんの訪問介護の担当ヘルパーからAさんに、「褥瘡の状態が悪化している気がするので、一度、病院の外来を受診して診てもらった方が良いのではないか」との相談がありました。Aさんは、日ごろから在宅で褥瘡の処置やケアをしてくれている皮膚科医師 と訪問看護師に、すぐ褥瘡の状況について確認しました。ただ、医師は「受診して入院するほどではない」と判断したため、訪問介護事業所へもその報告をしました。

救急搬送先で問い詰められたAさん
 その3日後のことです 。訪問介護事業所のヘルパーから、Bさんの意識レベルが低下したと、Aさんの事業所に連絡がありました。Aさんは訪問看護師などと共に すぐ駆け付けましたが、声かけしてもBさんの反応は薄く、救急搬送を依頼することになりました。

 Bさんは急性期病院に搬送され、後から病院に到着したAさんは、病院の医師から「すぐに話を伺いたい」と言われました。Bさんの入院している病棟に行くと、医師は強い口調で、「褥瘡が骨まで進行していて、かなりひどい状態になっている。なんでこんなにひどくなるまで放っておいたのか!」とAさんに問い詰めました。

 Aさんは、Bさんが訪問看護、訪問介護、在宅診療、福祉用具貸与を利用していることを伝えました。そして特に褥瘡の状態については、訪問介護の現場から、状態が悪くなっているのではないかと相談があったものの、診療を担当する医師らに状況を確認してもらい、病院受診や入院の必要性はないとの判断を受けていたことを話しました。

 すると、病院の担当医からは「えっ!」という声が出て、その後とても気まずい時間が流れました。「それはどこの診療所?どんな管理をしていたの?」と次々質問をぶつけられ、答えることになりました。

著者プロフィール

樋口昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)●ひぐちまさよし氏。社会福祉法人関西福祉会を経て、2000年に社会福祉法人福祥福祉会(豊泉家グループ)に入職。特別養護老人ホーム施設長、法人運営本部・営業本部長を経て、13年にグループ内の医療法人成和会・博友会に異動。両法人の法人本部長兼副理事長に就任し、病院マネジメントに従事する。

連載の紹介

医師が知らない介護の話
地域包括ケア推進の流れの中、医療現場において、医師が介護系職種と関わったり、介護側の実情を鑑みた上で対応しなければならない機会が増えています。医療界と介護界の双方に関わる著者が、医師が知っておくと現場で役に立つ介護業界の内情を綴ります。

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