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入院当日に退院先探しを指示され家族が激怒

2016/06/14
樋口 昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)

 介護施設に入居の相談で来訪される家族の中には、頭の中で整理がつかないまま、不安を抱えた状態で飛び込んで来られる方が少なくありません。
 
 相談内容の多くは、急性期病院からの退院先について。先日も、入院患者のご家族からこんな相談がありました。

 「1人暮らしで要介護2の母が自宅で熱を出し、病院に受診しました。肺炎とのことで、即日入院になったのですが、医療ソーシャルワーカーの方から、退院後は一人暮らしを継続するのは難しいだろうから、施設への入居を検討した方が良いと言われました。『1週間程度で退院になると思いますので、すぐに退院後の行き先を探してください』とのことだったのですが、突然のことでどうしたらいいのか分からず困っています」。

 もう一件、同様の相談もありました。「母は88歳。大阪で一人暮らしをしていたのですが、昨日熱中症で救急搬送され、入院となりました。私は昨日、東京から駆けつけたのですが、病院からはいきなり『5日程度で退院してほしい』と言われ、それまでに介護施設を探すよう勧められました。母は1人でトイレに行くこともできない状態です。家族は、息子の私一人だけで、遠方に住んでいるため同居は難しいし…。すぐに何件か介護施設の見学に行きましたが、納得して母を預けられる施設がありません。昨日入院したばかりで、まだしんどそうにしている母を、病院は追い出そうとしているとしか思えない!あそこの病院はおかしい!」。

 どちらのご家族も、途方に暮れた様子で、「とりあえず何かをしなければいけない」との思いから来訪されたようでした。体調を崩した親を心配し、やっと入院が決まって少し安心した矢先に、退院先を探すよう言われているのです。病院への不信感を持ってしまうことも少なくありません。

「病院」ならすべて同じだと思う家族も
 国の方針で、病院の機能分化や病院から在宅への流れが加速し、診療報酬改定でもそれらが誘導されている中、急性期病院には、平均在院日数の短縮が求められています。患者の状態が落ち着き退院の目途がついてからの退院支援になると、退院できる状態であるにもかかわらず、受け入れ先が見つかるまで入院を継続することになるため、病院側としては、新規患者の受入れができなくなるといった事情があるでしょう。

 ただ、患者さんやご家族は、このような背景については知りませんし、関心もないのが現状です。それどころか、高額療養費制度の自己負担限度額内の費用負担で入院できるのですから、1日でも長く病院という安心できる環境で過ごしたいと考えるでしょう。

 多くの患者さんやご家族は、「病院」は、どこも同じだと思っています。「評判の良い病院」、「よく名前を聞く病院」という判断基準はあるものの、病院によって得意とする診療科目が違う点や、受け入れ患者の層がそれぞれ異なることなどは、ほとんどの方が理解できていません。家族の中で誰かが病気になった時に初めて関心を持ち、焦って行動する人が多いのが現状なのです。

 介護施設に関しても同様で、介護保険制度や介護施設の種類、それらの利用方法についてもほとんど情報を持っていませんし、介護保険を利用するためには介護認定が必要であることさえ知らない方もおられます。

著者プロフィール

樋口昌克(豊泉家グループ医療法人成和会ほうせんか病院副理事長)●ひぐちまさよし氏。社会福祉法人関西福祉会を経て、2000年に社会福祉法人福祥福祉会(豊泉家グループ)に入職。特別養護老人ホーム施設長、法人運営本部・営業本部長を経て、13年にグループ内の医療法人成和会・博友会に異動。両法人の法人本部長兼副理事長に就任し、病院マネジメントに従事する。

連載の紹介

医師が知らない介護の話
地域包括ケア推進の流れの中、医療現場において、医師が介護系職種と関わったり、介護側の実情を鑑みた上で対応しなければならない機会が増えています。医療界と介護界の双方に関わる著者が、医師が知っておくと現場で役に立つ介護業界の内情を綴ります。

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