日経メディカルのロゴ画像

どちらも本心である(前編)
身体疾患の対応が不十分な「主治医」の事情

2016/06/13
東徹(いわくら病院[京都市左京区])

 今回もうまくいかなかった話なので心苦しいですが、「亡くなった方のお話をする」という本コラムの趣旨からして避けがたいものではありますので、ご了承ください。わざわざ改めて断りを入れるというのは、その中でも特に引っ掛かるものが多い、ということです。なかなか筆が進みづらいところはありますが、お付き合いいただければ幸いです。

統合失調感情障害を発症したエリート女性
 今回は山田さん(仮名、享年70歳女性)のお話です。山田さんは有名私立大学を卒業した、いわゆるエリートでした。卒業後は地方公務員として勤務し、順風満帆な生活を送っていました。しかし、24歳の時に初めての躁状態が起こります。この時には幻覚、妄想もあったようです。その後、仕事は続けられなくなり、何度も入退院を繰り返しながら一人暮らしを続けていました。診断は統合失調感情障害と付けられていました。

 統合失調感情障害というのは、統合失調症気分障害(うつ病、双極性障害などの総称)が混ざった病気です。というよりは中間的な病態といったほうがいいかもしれません。精神疾患は大きく分けて統合失調症と気分障害に二分されるといってもいいぐらいこの2つが代表的な疾患です。

 しかし、この2つの病気がはっきり区別できるぐらいに異質なものかというと、そうでもないのが精神医学のややこしいところです。統合失調感情障害という中間的な病名があること自体がややこしさの象徴です。2つの病気が合併している、とは言わないんですね。その中間的な病態に統合失調感情障害という1つの病名が付くのです。統合失調感情障害の症状や転帰などを解析し、統合失調症と気分障害の境界づけをきれいにできないか、と研究した人もいるのですが、結果は連続性の変化(スペクトラム)になっていて境界付けはうまくいかなかった、という話もあります。

 実は、気分障害にも幻覚妄想が出現することがあります。その場合は「精神病症状を伴う重症うつ病エピソード」などという言い方をします。精神病というのは統合失調症の別名です(統合失調症は精神疾患の代表なのです)。この「統合失調症の症状がある気分障害」は気分障害の一部として扱われます。しかしこれは統合失調感情障害とは別物。ややこしいですね。

著者プロフィール

東徹(いわくら病院[精神科単科病院])●ひがしとおる氏。2006年京都大学医学部卒。高知医療センターでの初期研修を経て、京都大学医学部付属病院、大阪赤十字病院精神神経科に勤務。2012年より現職。

連載の紹介

その死に誰が寄り添うか-精神科単科病院にて
精神科単科病院の「身体合併症病棟」。ここがどのような場所で、どのような人がどう生き、そして死んでいくのか。知られざる実態を、長期入院の末に亡くなった方々の実例を元に、一部改変してご紹介します。
『精神科病院で人生を終えるということ − その死に誰が寄り添うか』好評発売中

 精神科単科病院で身体合併症病棟を担当する著者が精神医療の現状を生々しくつづっていいます。胃瘻造設や延命治療の是非、誤嚥性肺炎への対応、患者家族への説明の難しさなど終末期医療における課題を挙げ、相模原障害者施設殺傷事件に対する私見も示しています。
 精神医療に限らず、高齢者の終末期医療に対する現場の肉声ともいえる内容です。高齢者医療に携わる全ての医療者に一読をお勧めします。(東徹著、日経BP社、3500円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ