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「無理な延命はしないで」の顛末(前編)
脳梗塞でやむなく転院、胃瘻造設で帰ってきて…

2015/09/24
東徹(いわくら病院[京都市左京区])

 このコラムも12回目ということで、そろそろ折り返し地点です。と言っても別に回数があらかじめ決まっているわけではありませんし、続ける気でいても打ち切りになってしまうかもしれませんが(そんなことあるのでしょうか、編集の方?)、一応、なんとなく今後の見通しがあるのです。実は、全体を通して大きなストーリーになるよう考えたりしながら書いているのですよ。行き当たりばったりに書いているわけではありません(多分)。そういう意味では、この機会に第1回から順に読んでいただいても良いのではないかとも思うわけです。

 さて、今回は渡辺さん(仮名、享年85歳男性)のお話です。疾患は統合失調症です。実は、恥ずかしながら詳しい病歴が分かりません。僕が主治医になった時の前の主治医からの引き継ぎが、「数十年入院の方、兄が時々面会に来る、時に肺炎を起こす」だけでした。

 当院で電子カルテが始まったのは、渡辺さんを担当する4年ほど前。それ以前の記録は紙カルテで地下倉庫に眠っています。ごくごく簡単な入院の経緯や生活歴などだけが電子カルテに移行していました。倉庫から紙カルテを引っ張り出さなかったのは、特にそうする必要を感じないほどに、症状が固定化していたからでした。このような状態を統合失調症の残遺状態といいます。

残遺状態でも柔和で穏やかな渡辺さん
 渡辺さんは、ほぼ寝たきりでした。食事の時はデイルームと呼ばれる食堂兼休憩所(どこの病院にも似たようなものはあると思いますが、デイルームって一般的な用語なんでしょうか?)にいます。車椅子に座ってデイルームで静かにテレビを見ることもあります。が、だいたいの時間はベッドに寝ていました。

著者プロフィール

東徹(いわくら病院[精神科単科病院])●ひがしとおる氏。2006年京都大学医学部卒。高知医療センターでの初期研修を経て、京都大学医学部付属病院、大阪赤十字病院精神神経科に勤務。2012年より現職。

連載の紹介

その死に誰が寄り添うか-精神科単科病院にて
精神科単科病院の「身体合併症病棟」。ここがどのような場所で、どのような人がどう生き、そして死んでいくのか。知られざる実態を、長期入院の末に亡くなった方々の実例を元に、一部改変してご紹介します。
『精神科病院で人生を終えるということ − その死に誰が寄り添うか』好評発売中

 精神科単科病院で身体合併症病棟を担当する著者が精神医療の現状を生々しくつづっていいます。胃瘻造設や延命治療の是非、誤嚥性肺炎への対応、患者家族への説明の難しさなど終末期医療における課題を挙げ、相模原障害者施設殺傷事件に対する私見も示しています。
 精神医療に限らず、高齢者の終末期医療に対する現場の肉声ともいえる内容です。高齢者医療に携わる全ての医療者に一読をお勧めします。(東徹著、日経BP社、3500円+税)

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