日経メディカルのロゴ画像

「死は希望だ」

2015/03/12
東徹

 精神科歴5年目が終わり6年目に入った東徹と申します。このたび、縁あって日経メディカルにコラムを書かせていただくこととなりました。まだ、精神保健指定医(行動制限をすることなどが可能となる資格のことです)も精神科専門医も取得していない若輩者ではありますが、主に精神科以外の医療関係者の方々に向けて、精神科がどんなところで何をしているのかというところをご紹介できたらと考えております。

 僕が勤務しているのは、京都市にあるいわくら病院という精神科単科病院です。京都の岩倉という地域は古くから精神科に深い関わりのある地域です。その中で、開放医療に取り組んできたそれなりに歴史のある病院です。と紹介できるほど経歴は長くありませんので、概要はこちらなどをご参照いただければと思います。

精神科単科病院の「身体合併症病棟」とは?
 ともかく、このいわくら病院に勤務し始めて3年が経過しました。精神科単科病院なので、他の科の常勤の先生はいません(非常勤の先生はおられます)。その中で、「身体合併症病棟」という病棟を担当してきました。「身体合併症」は精神科独特の言い方で、他科の方からすれば「精神疾患を合併した身体治療が必要な方」のことです。一般的な精神科医なら聞いただけでちょっと腰が引けてしまいそうな名前です。わざわざ「精神科」「身体科」とか分けること自体がナンセンスだとは思いますが、わざわざ「身体合併症」という言い方があるということは、やはり精神科医にとっては専門外のことが多いことも否めません。逆に「精神疾患合併症病棟」という病棟を考えてみてください。ちょっと腰が引けませんか?(笑)

 「身体合併症病棟」と言っても、専門的な身体治療を行えるわけではありません。当院で対応できる程度を超えると、内科・外科の先生にお願いしたり、転院させて治療するのです。身体疾患についてはあくまで「合併症」であって、その治療は僕だけが担当するわけではないのです。また、その「合併症」のactiveな症状が常にあるわけでもありません。

 ざっくり言うと、長期入院の高齢者が多い病棟です。高齢になると複数の疾患を持つため対応が難しくなるのは一般の病院と同じです。まあ具体的にどんな方々がいるかといったことは今後このコラムで書いていくとして、精神科の中でも少し特殊な病棟の話をご紹介することで、なかなか見えづらい精神科の内情を垣間見ていただく機会になること。そして精神疾患をもつ方々の実態や単科病院というものの実情、精神科と身体科との関連性について考えていただけることなどを期待しておる次第であります。

著者プロフィール

東徹(いわくら病院[精神科単科病院])●ひがしとおる氏。2006年京都大学医学部卒。高知医療センターでの初期研修を経て、京都大学医学部付属病院、大阪赤十字病院精神神経科に勤務。2012年より現職。

連載の紹介

その死に誰が寄り添うか-精神科単科病院にて
精神科単科病院の「身体合併症病棟」。ここがどのような場所で、どのような人がどう生き、そして死んでいくのか。知られざる実態を、長期入院の末に亡くなった方々の実例を元に、一部改変してご紹介します。
『精神科病院で人生を終えるということ − その死に誰が寄り添うか』好評発売中

 精神科単科病院で身体合併症病棟を担当する著者が精神医療の現状を生々しくつづっていいます。胃瘻造設や延命治療の是非、誤嚥性肺炎への対応、患者家族への説明の難しさなど終末期医療における課題を挙げ、相模原障害者施設殺傷事件に対する私見も示しています。
 精神医療に限らず、高齢者の終末期医療に対する現場の肉声ともいえる内容です。高齢者医療に携わる全ての医療者に一読をお勧めします。(東徹著、日経BP社、3500円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ