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連載第90回
依頼した画像診断の所見を鵜呑みにし、癌を見落とし

2008/02/05

【今回の相談事例】
 最近、画像診断は機器の進歩によって精度・診断範囲が上がっていますが、それに伴って読影は難しくなってきています。当院では放射線科医は毎日勤務ではなく、内科医など画像診断を依頼する側は、依頼書などに対して返ってくる放射線科の回答箋(画像診断報告書など)に頼り切っているのが実情です。
 先日、ある患者の画像診断を依頼したところ、放射線科からは「異常はあるが癌の所見とはいえない」という回答が返ってきました。専門家の読影だからとこれを信じて(鵜呑みにして)しまい、示唆もなかったことから造影検査の再依頼をせず、結果的に、造影検査を行えば発見できた癌を見落としてしまいました。このような場合、我われ、依頼した側には責任はないと考えてよいのでしょうか。
(病院内科医)

【回答】
“犯人捜し”にあまり意味はないが…
 民事損害賠償では、主として経営主体である病院の責任が問題になります。放射線科医がその病院に所属する医師、あるいは病院が継続的に読影を依頼している医師であれば、システムの不備の賠償責任、もしくは個々の医師に責任があるとした場合でも使用者賠償責任など、病院の責任は免れられません。従って、責任が誰にあるかの「犯人捜し」は、建設的なこと、意味のあることとは考えられません。

 しかし、医師個人の責任が問題となるとき(医師が訴えられたときなど)や、ほかの病院に検査を依頼した場合などは事情が変わります。そして何よりも、日常診療における役割分担・安全性という観点からは、依頼する側とされる側、両者の関係をどのようにとらえるべきか、よく考えておく必要があると思われます。以下、少し説明させてもらいます。

専門科でないことが免責理由にはならない
 医師個人が訴えられた場合、「専門科でない」ということだけで免責されることはなく、やるべきことをやったかどうかが責任の有無の分かれ目であることは、これまでの数々の裁判例で示され、確定してきています。この原則は、ほかの病院に依頼したときも同様といえます。

 また、医療の本質、患者の視点からも、そう考えるべきと思われます。

双方の情報・理解には差があることを前提に
 今回の事例では、依頼する側とされる側、それぞれに言い分と問題があると思われます。

 癌の鑑別を目的とする場合、画像診断を依頼する側は通常、それなりに予見や危機感を持って依頼するはずです。しかし、依頼書では臨床情報が細かく報告されていなかったり、癌発生の蓋然性の多寡や危機感について細かく触れていないかもしれません。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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