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連載第87回
患者への説明、記録はどこまで必要?

2008/01/08

【今回の相談事例】
 当院の一部の医師は、患者への説明の際に看護師を立ち会わせ、さらに看護日誌に内容を詳細に記録させています。記録する看護師からは、そのために看護業務の時間が削られてしまうという不満が出ています。医師および看護師に、どのように指導したらよいでしょうか。
(相談者:私立総合病院副院長)

【回答】
 医師が患者に治療方針や手術の内容という重要な事柄を説明する際、関係する看護師を立ち会わせることは、情報の共有という観点から有益なことです。しかし、説明の内容を医師自ら詳細に記録、あるいは看護師に詳細に記録させることは、それほど有益ではありません。

 逆に、医師または看護師から、記録化に手間がとられるために、本来の診療や看護に注力する時間が取れなくなるという不満が出るようであれば、マイナスの方が大きいといえます。誰が記録するにせよ、「記録はリアルタイムにできる範囲でよく、説明の要約が残っていれば十分」と指導すべきでしょう。

紛争になれば説明義務はまず争点に
 インフォームドコンセントの重要性は、誰しもが認めるところ。それを裏付けるかのように、「手術や治療法の選択に際して、必要な説明がなされなかった」とする患者側からのクレームが多発しています。

 訴訟においても説明義務違反の主張が多く、患者側勝訴の理由となる事例も多くあります。説明義務違反は手術手技上のミスの有無などと違って、鑑定の手続きを踏まなくても裁判官が判断しやすく、患者側の弁護士は請求の根拠の1つとして、必ずといっていいほど説明義務違反を付け加えています。

証拠価値は説明の要約で十分
 医師が医事紛争に対して自衛するため、説明の証拠化を強く意識して、看護日誌に速記録のような詳細な記録をさせている例が散見されます。速記録的な看護日誌は、記載されている内容を説明したという最強の証拠となることは確かです。しかし、説明の際に速記録を作らせ、さらにその後に詳細な記録に仕上げさせるとなれば、看護師から多くの時間を奪うことになります。

 速記録に頼ると、記録が不完全な場合、そこに記載されていないことを説明したと立証することは困難になります。また、患者との一問一答の記録は、患者が抱いている不安がリアルに浮かび上がってはきますが、説明の証拠としては散漫な印象となります。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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