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連載第86回
「1年前の健診で肺癌を見落とし」とクレーム

2007/12/25

【今回の相談事例】
 内科開業医ですが、入社時健康診断を依頼され、胸部X線写真を撮って「異常なし」としたところ、1年後に「肺癌が見付かった」というクレームを受けました。咳が出るということで別の診療所に行ったら、総合病院を紹介されて受診し、肺癌が発見されたということです。1年前の健診で肺癌と判断できなかったことが過失とされてしまうのでしょうか。
(相談者:内科開業医)

【回答】
 入社時に健康診断で胸部X線写真を撮り、健康状態を確認して入社を許可するということは広く行われているようです。このような健診は、人間ドックのように問診があったり、患者からの異常の訴えがあったり、過去に撮っているX線写真と比較するといった形で診断が行われるものではありません。

 従って、写真1枚のみでの判断ということになりますので、その判断には限界があり、かなり明らかな病変でなければ、見落としとは判断されにくいと考えられます。

 また、どのような医療機関が健診を行っているかも、過失の有無の判断に影響を及ぼすと考えられます。

 つまり、一般開業医に対して要求されるべき医療水準と、大学病院のような高度医療機関に求められる医療水準は異なると、判例上考えられているからです。大学病院などでX線を撮った場合、専門医が写真を読影することを期待されることになり、専門医であれば通常は見逃さないという陰影を見落とすと、「過失がある」ということになります。

 逆に、一般開業医が健診を担当した場合、専門医ではない医師が異常と判断するのは困難と考えられれば、「見落としが直ちに過失になるとは言えない」ということになります。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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