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連載第84回
精神疾患患者に殴られた。損害賠償は請求できる?

2007/12/11

【今回の相談事例】
 当院の勤務医が患者に殴られてけがをしました。患者には精神疾患があるようです。そうなると、やはりこの患者に損害賠償を求めることはできないという結論になってしまうのでしょうか?
(相談者:病院長)

【回答】
 そんなことはありません。精神疾患があっても、物事の善悪が分かるようであれば、賠償責任を負う可能性があります。また、患者の家族に賠償請求することも考えられます。

 反対に、勤務医の方から安全管理に落ち度があるとして、病院が訴えられることもあり得ます。参考になる判決が出ていますので、ご紹介しましょう(福島地方裁判所2004年5月18日判決)。

事件の概要
 患者Aは統合失調症に罹患し、B市立病院神経科のC医師の治療を受けていました。ある日、泌尿器科の指示で処方されている薬をC医師に聞きに行った際、強制的に入院させられるとの思い込みから、刃渡り16㎝の出刃包丁でC医師を殺害するに至りました。

 C医師の遺族は、患者A、患者の両親DとE、病院の設置者であるB市を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起しました。

患者の責任
 裁判所は、患者Aの言動が概ね了解可能であり、計画的な犯行であるという面もあり、動機も了解可能であることから、是非弁別能力及び行動制御能力が相当程度減弱しているものの、心神耗弱の状態にとどまっているとして、責任能力を認めました。

 統合失調症による凶行であっても、患者本人の責任を問う余地があることが分かります。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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