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連載第80回
最近の判例に見る、医療訴訟に備えるポイント

2007/11/13

[今回の相談事例]
 医療過誤で民事訴訟を提起された場合に全面勝訴の判決を得るために、日ごろから気をつけておくべき点があれば教えてください。
(相談者:内科開業医)。

[回答]
 医療過誤訴訟では、大きく分けて、診療上の過失(適切な診断または適切な治療をしなかった過失)と患者説明上の過失(必要かつ十分な説明をしなかった過失)の有無が争われます。ですから、民事訴訟で医師側が全面的な勝訴判決を得るための条件は、日ごろから、適切な診断、適切な治療、必要かつ十分な説明を実施することといえます。

 この条件はいわば医療の目指すべき理想です。しかし、現実の臨床においてすべての診療でこの条件を達成することは不可能といえるでしょう。

 にもかかわらず、現実の医療訴訟では判決まで至った場合の完全勝訴率は60%前後で推移しています(1998~2002年最高裁事務統計による。ただし、和解まで含めて医療訴訟全体でみた勝訴率は25%前後で推移)。裁判所はパーフェクトな診療や説明を要求しているわけでないことが分かります。

 では、実際の訴訟事例で解説しましょう。

 別表(pdf)は当事務所(高麗橋総合法律事務所)で2006~07年に受けた医療過誤訴訟判決の一覧表です。棄却判決が大半を占める理由は、一部でも「過失あり」と認定されたケースはほとんどが和解で終了しているという事情によります。結局、無責のケースか、一部有責でも事情により和解できなかったケースが判決まで至ったといえます。

 この表の解説欄をご覧いただけば、ほとんどのケースで診療上の過失だけでなく、説明上の過失が争われていることがお分かりいただけると思います。その意味で日常診療上の訴訟対策として、患者さんやご家族に対して必要かつ十分な説明を丁寧に繰り返すことが非常に重要であることがお分かりいただけるでしょう。その場合の説明の基準としては、最高裁(2001.11.27)のいう4つの事項の説明が必要となりますので、念頭において説明されるとよいでしょう。

最高裁が示した、診療における4つの説明事項
1.診断(病名と病状)
2.実施予定の治療内容
3.治療に付随する危険性
4.ほかに選択可能な治療法があれば、その内容と利害得失や予後

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

ケースに学ぶトラブル対策講座
医療事故や医療過誤訴訟のリスクは増大する一方。医療事故や紛争・トラブルの具体例を提示しながら、そこに内包する法律的な問題や対処法について、医療関係者向けに平易かつ簡潔に解説します。

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