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連載第79回
医療用具の適応外使用のリスクは?

2007/11/06

[今回の相談事例]
 当院では、気管支拡張術を行う際、動脈血栓除去用のフォガティカテーテル適応外使用しています。これまでのところ、特に問題を起こしていませんが、仮にフォガティカテーテルを用いて気管支動脈からの出血というような事故が起きた場合、どのような問題があるでしょうか。
(相談者:市立病院・呼吸器内科部長)

[回答]
 最高裁判所は、「医師が医薬品を使用するに当って医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り医師の過失が推定される」と判示しています。同じ理屈は医薬品のみならず、医療用具を本来の用途以外に用いた場合にも当てはまります。

 よく知られているように、最高裁の上記判示は、ペルカミンS(一般名:塩酸ジブカイン)という麻酔薬を使って虫垂炎の手術を行ったところ、患者がアナフィラキシーショックを起こしたという事案についてです。血圧測定を同薬剤の添付文書に定められた2分に1回ではなく、5分に1回の割合で実施していたことから患者に脳機能低下の後遺症を残してしまったわけです。上記判示でも「添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合(下線は筆者)」とある通り、過失が推定される前提として、注意事項に従っていないことによって事故が生じたという条件(因果関係)が満たされる必要があります。

 上記事案について、最高裁は、2分ごとに血圧を測定していれば、アナフィラキシーの徴候の1つである血圧低下をより早くとらえることができ、ショックに至る前に適切な処置をできたと考えて、因果関係を肯定したわけです。今回の相談事例にあるように、本来は動脈の血栓除去に用いるフォガティカテーテルを使った気管支拡張術で事故が起き、裁判にまで至った場合、原告である患者側はおそらく、「適応外使用をしたことから、当然に医師の過失が推定される」と主張すると思われます。しかし、原告のそのような無条件の過失推定の主張に対しては、果たしてフォガティカテーテルを用いた結果として事故が起きたか否かを十分に検証する必要があります。

 つまり、気管支拡張術においては、どの程度の圧力を加えて、どの程度拡張することが適切と一般的に考えられているかを検討した上で、気管支の内径と最大拡張時のフォガティカテーテルの外径との関係、フォガティカテーテルの拡張時の圧力、気管支を拡張する場合の安全域などの詳細な事実を確認しなければ、フォガティカテーテルを用いた結果として事故が起きたといえるか否かが判定できないわけです。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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