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連載第77回
患者が誤嚥で死亡、病院の責任は?

2007/10/23

[今回の相談事例]
 骨折で入院をしていた患者さん(80歳)が食事をのどに詰まらせて窒息死する事故が起こりました。病院に責任があるのでしょうか。
 また、痰が詰まって死亡した時はどうでしょうか。
(相談者 総合病院・外科医)

[回答]
 この患者さんが通常の高齢患者以上に誤嚥の危険性が高かったかどうかが問題です。患者さんが食物を嚥下しにくい状態であって、誤嚥すれば容易に窒息するおそれがあったことを予見できた場合は、通常の高齢の患者さん以上に、誤嚥を防止するための措置を講じる注意義務があります。その危険性に応じた誤嚥予防(摂取させる食物の適切な選択)、誤嚥した場合に備えた監視・看護(看護師などによる食事介助や見守り)、誤嚥後の対応(気管挿管などの呼吸確保)が適切になされていない場合は病院の責任が認められることになりかねません。

 また、痰詰まりによる窒息の場合は、状態に応じた頻回の気管吸引を行っていたかどうかが問題になります。

誤嚥のリスク
 誤嚥とは、異物を気管内に吸い込んでしまうことですが、嚥下障害や意識障害が原因となって飲食物や吐物を誤嚥してしまうことがあります。

 乳幼児と高齢の患者さんには多かれ少なかれ誤嚥のリスクがあるので、注意を要します。そして、そのリスクの程度によって、病院の注意義務の内容と程度も変わってきます。患者さんが元気に食事をとれていたのか、脳梗塞など嚥下障害を生じやすい既往症があったのか、ゆっくり食べるのか、かきこむようにして食べるのか。それぞれの患者さんの誤嚥リスクに応じて、食事の内容や方法、食事の際の監視などを考える必要があります。

医療機関の責任を認める判例も出てきている
 従来は、誤嚥と認められれば、医師の予見可能性が否定され、医師の責任も否定される場合が多かったようですが近時は医療機関の責任を認める判例も出てきています。

 東京地裁八王子支部平成16年10月21日判決(判例1)は、大腿骨骨折で入院をしていた患者さん(83歳女性)が誤嚥により窒息死した事案で病院の責任を認めています。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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