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連載第66回
説明義務は「視点の転換」でとらえる

2007/07/24

【今回の相談事例】
 総合病院に勤務している外科医です。少し前から患者への説明義務ということが厳しく言われています。しかし、どのような場合にどのようなことを説明すべきなのかについての具体的な基準もなく、また毎日多くの患者を診ており説明の時間もなかなか取れません。正直言ってこの説明義務というものに少し困惑しているところです。
 何かいいアドバイスはないでしょうか。
(相談者:総合病院・外科医)

【回答】
説明義務の法的意味は2つに大別
 ご相談の内容にある通り、少し前から医師の患者(家族)(以下、「患者」といいます)に対する説明義務(「患者の自己決定権」とか「インフォームド・コンセント」とも表現されます)が裁判所の判決により厳しく問われるようになっています。説明義務違反があった場合には、事例によっては、慰謝料のみならず、患者に生じた悪しき結果の全部について賠償責任が認められる場合もあります。

 ここで、法的説明義務についての概要を整理しておきます。まず、説明義務が認められる場合としては、
 (1)患者の有効な承諾を得るための説明義務
 (2)療養方法などの指示・指導(発生が予見される危険ないし悪しき結果の回避)のための説明義務の2つのケースに大別されます。

 (1)は、身体への侵襲を伴う検査や手術などを行う場合の事前(事後では説明義務違反となります)の説明のことです。(2)は、外来患者や退院時あるいは投薬などの際に、出現の予想される加療が必要な症状などの説明とその際の受診の指導です。

説明は分かりやすく具体的に
 次に、説明すべき内容と範囲ですが、まず前提として言えることは、
 (1)医師の患者に対する説明義務は、患者(人間)の自己決定権(人間は自己の判断により自分の人生、生き方、行動を自由に決定し得る人格的自律権を有している)に基づき、これを行使させるために認められるものである
 ということです。したがって、
 (2)ここからまず第1に、説明は医療に素人である患者が自己決定し得るに足りるように分かりやすく、理解できるものであることが必要であり、そして第2に、できるだけ具体的でなければならない
ということになります。

 医師は説明したと言い、患者は聞いていないというトラブル(ケース)がまま見られますが、説明の際の表現方法に起因することもあるのではないでしょうか。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

ケースに学ぶトラブル対策講座
医療事故や医療過誤訴訟のリスクは増大する一方。医療事故や紛争・トラブルの具体例を提示しながら、そこに内包する法律的な問題や対処法について、医療関係者向けに平易かつ簡潔に解説します。

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