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連載第65回
行政処分は医師にとって死活問題

2007/07/17

【今回の相談事例】
 交通事故で搬送された患者の急性硬膜外血腫を見落とし、患者が死亡しました。弁護士が間に入って、遺族との示談交渉を進めていますが、並行して業務上過失致死罪で捜査機関の取り調べを受けています。検察官から、50万円の罰金刑になる見込みであると聞かされました。50万円の罰金刑になると、他にも何か不利益があるのでしょうか。
(相談者:私立病院開設者・院長)

【回答】
 医療事故が起こると、民事のみならず、刑事処分行政処分の問題に発展することがあります。概略は以下の通りです。
  民事:損害賠償
  刑事:業務上過失致死傷罪(懲役、禁固、罰金)
  行政:免許取消、医業停止、戒告
 刑事事件となり、有罪となれば(罰金刑も含む)、多くの場合に、行政処分も受けることになります(医師法7条)。ここで、少し行政処分について説明をしておきます。

刑事処分を受けると医業停止などの行政処分に
 刑事処分で罰金以上の刑に処せられた場合、医道審議会医道分科会の審議を経て、厚生労働大臣が、医師免許取消医業停止戒告の処分を行います(それ以外にも、麻薬中毒者や、医事に関し犯罪または不正の行為のあった者なども行政処分の対象になります)。

 免許取消を受けた場合や医業停止の期間中は、医師としての一切の業務が禁止されます。単に診療ができないだけではありません。行政処分を受けた医師が診療所の開設者である場合には、診療所を閉鎖するか、診療所の開設者を変更しなければなりません。勤務医を雇って、医業停止期間中のみ診療を交代してもらうこともできません。医療法人の理事長をしている場合には、理事長を交代することが必要です。また、医師免許取消や医業停止期間中は、医師や医師を想記させる肩書きでの講演会活動などもできないとされています。

 医業停止で、診療所を一定期間閉鎖する場合には、受診患者の転院先の紹介なども必要になってくるでしょう。看護師をはじめとする職員も、いったん解雇するか、あるいは診療再開に向けて給与を払い続けて確保しておくか、経営上も悩ましい問題に直面します。

 刑事処分では、50万円や100万円程度の罰金なので、「この程度の額なら」と安易に妥協してしまうと、行政処分では、医業停止など思わぬ不利益を受けかねません。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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