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連載第47回
経管栄養中止は殺人罪に該当する恐れも

2007/03/02

【今回の相談事例】
 高齢者の寝たきりの親を持つ家族から「経管栄養の実施による医療費を支払うのが大変なのでやめてほしい」と言われています。患者本人には意識がないので家族の意思に従うのが良いかと思ってますが、問題はないのでしょうか。
(相談者:総合病院・内科医)

【回答】
 日本は世界一高齢化が進んでいる国であり、終末期医療をどうするかが非常に大きな問題となっています。今回の相談のようなケースは今後も増えていくと思いますので、注意する必要があります。

 医療行為は人の体にメスを入れるような治療を含むものですが、それが合法であるのは正当業務行為(刑法35条)とされているからで、正当でない医療行為は刑法上も傷害あるいは殺人に当たることを厳しく注意しておかなければなりません。

 「医療の基本法は刑法である」と言われる方もおりますが、ある意味では上記の通り、的を射ているといえるのです。

 さて、本件について考えてみましょう。本件では、経管栄養の中止で摂取カロリーを下げることにより、患者が死亡するか否かは必ずしも明らかではありません。ただし、死亡時期がそれにより早まる場合を考えてみると、カロリーを下げるあるいは単に水分の補給のみに変更するという新たな行為が加わることにより死期が早まり、そして死期が早まることを認識しながら、そのような行為を行ったとするならば、殺人罪を構成することになると考えられます。

 現在の状況よりも死期が早まると分かっていてそれをあえて行い、死期を早めるという図式になるので、殺人罪の構成要件を充足してしまうのです。それは家族の意思の下に行ったことであっても同じです。「家族全員が、自分が死ぬことに同意したら殺されてしまう」という場合と同様に、殺される側(患者側)に立って考えてみれば、家族の意思が絶対的なものではないことは容易に理解できると思います。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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