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連載第50回
患者死亡で警察から取り調べ、どう対応すべきか

2007/03/27

【今回の相談事例】
 私が診療していた患者が死亡しました。今から思えば、別の治療方法を選択する方法もあったとは思いますが、診療の当時においては最善を尽くしたつもりです。この件について、警察から取り調べを受けることになりました。取り調べを受けるに際して、特に注意すべき点はありますか。
(相談者:市立病院・勤務医)

【回答】
 福島県立大野病院の例を挙げるまでもなく、医師や看護師などの医療従事者が、刑事事件に巻き込まれ、捜査の対象になる事例が増えてきています。刑事責任を問われた場合に科せられる罪や、取り調べの際の注意点などをまとめると、以下のようになります。

1.業務上過失致死傷罪の法定刑
 相談の事例で問われているのは、業務上過失致死罪(刑法211条1項)であり、その法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金です。

2.行政処分の可能性も
 刑事罰を受けると、その後に厚生労働省の医道審議会において、一定期間の医業停止という行政処分を受ける可能性が高くなります。医業停止は、1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年といった期間になります。

3.何について取り調べられるか
 業務上過失致死傷罪では、医療従事者の過失(注意義務違反)、および結果発生(患者の死亡や障害など)との因果関係を中心に取り調べが行われます。注意義務違反は、以下のように予見義務と回避義務から構成されます。
予見義務:悪しき結果が発生することを予見すべきであったか。
回避義務:予見した場合に、適切な回避措置を講じるべきであったか。
 これらの判断の基準となるのは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準です(最高裁判所1982年3月30日判決)。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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