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連載第48回
異状死の届け出をめぐる現状は

2007/03/13

【今回の相談事例】
 現在の異状死の届け出基準を教えてください。また死因究明のために、第3者機関を設立する動きがあると聞いていますが、これはどのようなものなのでしょうか。
(相談者:総合病院・内科医)

【回答】
異状死体の届出基準は学会により相違
 医師法21条の異状死の届出基準については、現在、「届け出るべき異状死」の対立する「2つの見解」がある上、これとは別に裁判所の基準(外表面の異状を含めた総合的判断)があります。これを整理すると、以下のようになります。

1.日本法医学会ガイドラインの見解(1994年5月)
 広義説(診断済み疾病死以外説)と呼ばれるものである。
(1)異状死の概念:「基本的には病気になり診療を受けつつ診断されているその病気で死亡することが【普通の死】であり、これ以外は【異状死】である。
(2)医療行為に関連する異状死の概念:診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いのあるもので以下の場合を言う。
 1)注射・麻酔・検査・分娩などのあらゆる診療行為中、または診療行為比較的直後における予期しない死亡
 2)診療行為自体が関与している可能性のある死亡
 3)診療行為中、または診療行為の比較的直後の急死で、死因が不明の場合
 4)診療行為の過誤や過失の有無を問わない

2.日本外科学会の見解 1)2001年4月10日、2)2002年7月
 日本法医学会基準へのアンチテーゼとして提起されたもので、限定説(予期可能性のある合併症死亡の除外)と呼ぶべきものである。
(1)診療行為に関連する異状死の概念:「異状死とはあくまでも【診療行為の合併症としては合意理的な説明ができない予期しない死亡およびその疑いがあるもの】を言うものであり、【診療行為の合併症として予期された死亡】は異状死に含まれないことを確認する(2001年4月10日診療に関連した異状死についての声明)。
(2)医療行為に関連する異状死の届出基準:何らかの重大な医療過誤の存在が強く疑われ、または何らかの医療過誤の存在が明らかであり、それらが患者の死亡の原因となったと考えられる場合(2002年7月診療行為に関連した患者の死亡・傷害の報告についてのガイドラインに関する報告)。

3.判例の見解
 最高裁は「医師法21条にいう死体の「検案」とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい、当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わない」「本件届出義務は、医師が死体を検案して死因等に異状があると認めたときは、そのことを警察署に届け出るもの」と判示するが、死因等が異状な場合とは具体的にどのような場合を指すのか、外表上の異状に限定する趣旨か、従前の経過と外表検査を総合して判断する趣旨なのか、明確な基準を呈示しなかった(最高裁2004年4月13日)。

 ただし、上記最高裁の原審の東京高裁での異状死の具体的判断方法(2003年5月19日)は、「翌2月12日の時点での判断は、前日に誤薬の可能性の説明を受けていたことに加え、病理解剖に立ち会った際、死体の外表を検査して検案を行ない、Aの死体の右腕の静脈に沿って赤い色素沈着がある異状を認めたことが明らかで」として死体検案時に異状を認めたと認定している。

著者プロフィール

HDLA研究会●HDLA研究会は、医事紛争に関して医療機関側の代理人を務める弁護士で組織。会員は約100人で、各種勉強会を開催するほか、会員相互の情報交換を行っている。

連載の紹介

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