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家庭医による妊婦フォローはどこまで?

2011/01/27

 皆さんはじめまして。私は現在、札幌市にある手稲家庭医療クリニックという19床の有床診療所で院長をしています。「家庭医」というのが私の職業です。内科・小児科・産婦人科を標榜して外来、訪問診療を行いながら、病棟では年間100人を超える末期癌患者さんの看取りを行っています。

 外来には風邪や腹痛などの急性症状の方、糖尿病や高血圧などの慢性疾患、それ以外にもうつ病などの精神科疾患、腰痛やめまい、性器出血やおりものなどの婦人科疾患、そして小児の予防接種や妊婦健診の方も来院します。週に1回はクリニックの母体施設である近くの基幹病院でお産も取り上げています。

 訪問診療は認知症の患者が中心で、末期癌患者さんの在宅医療も行っています。在宅で診られない末期がん患者さんの受け皿として、診療所ではホスピス病棟も運営しています。まさに、生まれてから人生の最期を迎えるまでに求められる幅広い診療を、家庭医として実践しています。

 この診療所には「家庭医になりたい」と志望する研修医達が全国から集まっています。今は10人の家庭医志望の研修医と、4人の内科志望研修医が外来を中心に研修を行っています。私の他に2人の指導医がいて、診療を行いながら研修医の指導を行っています。ゆくゆくはその研修医たちが地域の医療を担えるようにしたいと考えています。

家庭医とは「どんな時でもまずかかってもらえる医者」
 さて、前置きが少々長くなりましたが、家庭医とは一体、どんな存在なのでしょうか?赤ちゃんからお年寄りまで、風邪から難病まで何でも診られる医者…と言いたいところですが、スーパーマンではありませんので、実際にはどんな病気であっても上手に治してしまうようなことはできません。

 ただ、どんな時でもまずかかっていただける医者、それが家庭医です。患者さんの専門医志向を考えれば、頭痛なら脳神経外科にかかり、胸が痛ければ循環器内科にかかるというのが今は普通なのかもしれません。しかし、健康上のどんな問題でも、可能な限り引き受ける姿勢で地域医療に取り組むなら、住民にとってとても心強い存在になれるのではないでしょうか。

 また、専門性の過度な重視などによって生じる医療現場の無駄を省き、限られた社会資源を効率的に利用するのにも役立つかもしれません。医師不足対策への一つの処方せんになり得る可能性もあります。

 昔はどこにでもいた町医者は、家庭医の原点とも言えるでしょう。「何でも診る」のが昔の医者だったのですから。しかし、これだけ高度に進んでしまった医学と医療現場の中で、昔の町医者のような役割を負うのは非常に難しいことになってしまいました。それでもそんな医者が必要で、患者から求められていることは古今東西変わりがありません。

 では、家庭医は、どのような姿勢で診療に取り組んでいけばいいのか?この連載では、実例をベースにしたケーススタディーなどを盛り込みながら、家庭医の果たすべき役割を皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

 舞台は、単純レントゲン、超音波診断装置、顕微鏡や簡易血液検査機器などを備えた一般的な内科系の無床診療所。地域の基幹病院の初期研修先として、研修医を受け入れているという設定です。第1回となる今回のテーマは、「妊娠検査で来院した女性患者」です。

著者プロフィール

小嶋 一(手稲家庭医療クリニック院長)●こじま はじめ氏。2000年九大卒。沖縄県立中部病院などを経て03年渡米。ピッツバーグ大学関連病院勤務。米国家庭医療専門医、公衆衛生学修士。08年手稲渓仁会病院。09年より現職。

連載の紹介

【臨床講座】家庭医の作法
どんな時でもまずかかってもらえる医者、それが「家庭医」。住民には心強い存在であり、医師不足対策への処方せんにもなり得ます。本連載では、実例などを盛り込みながら、家庭医の果たすべき役割を考えていきます。

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