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「刑事の目線」と「患者への目線」

2016/06/20
援川聡(エンゴシステム代表取締役)

 今回は前回に引き続き、初期対応の落とし穴について述べましょう。一般に、刑事の眼光が鋭いことは、皆さんご存知だと思います。それは、相手を威嚇するためではありません。取り調べや尾行の際に、しっかりと“目を凝らして”相手の一挙手一投足を見逃さないようにしなければなりません。こうした日常があるから、結果的に目つきが鋭くなるのです。これが、「刑事の目線」です。

 さて、医療機関では電子カルテの導入が進んでいます。電子カルテのメリット・デメリットについては、医療現場で働く皆さんは承知かもしれませんが、改めて整理してみましょう。

【メリット】
・デジタル情報のため、文字などを識別しやすい。
・情報の一元化により、スタッフの負担を軽減できる。
・検索・チェック機能により、誤りを発見しやすい。
・カルテの保管場所を削減できる。
・予約受付システムと併用することで、患者の待ち時間を短縮できる。

【デメリット】
・パソコンの故障や停電などの理由で使えなくなることがある。
・キーボード操作に不慣れな医師にとっては、記入に時間と手間がかかる。
・新たに導入するために莫大な費用が掛かることがある。

 おおよそ、こんなところではないでしょうか?

 こうして見ると、電子カルテはたしかに便利であり、今後も導入は増えていくでしょう。しかし、元刑事の視点からいえば、見落としてはならないことがあります。それは、「患者への目線」です。例えば、こんなケースがあります。なお、本稿で紹介する事例は実話を基にしていますが、プライバシーなどに配慮してアレンジしています。

 ある一般病院で、男性患者が突然生じた頭痛のために救急外来を受診しました。その日の救急外来はいつにも増して混雑しており、男性はこめかみに手をやりながら、看護師に「まだですか?」と訴えました。看護師は「もう少しお待ちください」と答えながらも、ストレッチャーに乗せた別の急患に神経を集中させていました。

 結局、男性が診察を受けられたのは、病院に到着して1時間近く経ってからでした。男性は顔をしかめつつ、診察室に入りました。

 「今日はどうされましたか?」と医師が尋ねると、男性は「急に頭痛がして……」と説明。5分もしない問診のやり取りのうちに、医師は「慢性頭痛のようですが、念のためCTを撮りましょう」と説明。ベテラン医師の貫録十分です。

 ところが、ここで男性が声を荒らげます。

 「もっときちんと説明しろよ!慢性頭痛ってなんですか? 熱がないからって安心できるんですか? 『念のため』ってどういうことですか?」

著者プロフィール

援川聡(エンゴシステム代表取締役)えんかわ さとる氏●1979年大阪府警察に入職。1995年大手流通企業に転職し、渉外担当としてトラブルや悪質クレームの対応に当たる。2002年に(株)エンゴシステムを設立し、企業や医療機関などの危機管理をサポート。著書に『クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など。

連載の紹介

援川聡の「クレーム対応の勘所」
テレビやインターネットで得た知識を基に医師の診療方針に意見したり、待ち時間の長さや医療従事者の態度などに気に入らないことがあると文句を言って理不尽な要求をする「困った患者」。そんなクレーマー患者やその予備軍への適切な対応の勘所を、クレーム対応コンサルタントである援川氏が伝授します。

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