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既に始まっているクレーマーの「2025年問題」

2015/09/24
援川聡(エンゴシステム代表取締役)

 団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」では、医療介護などの社会保障費の急激な増大に対して抜本的な対策が必要だと言われています。翻って、医療現場では団塊世代のモンスター患者が既に顕在化し、深刻な問題となりつつあります。言わば、2025年問題が前倒しされている格好です。

 最近、クレーム対応の指導をする中で、団塊世代のモンスターが増えていると強く感じています。“団塊モンスター”はかつて仕事に没頭し、激しい競争社会で身に付けた交渉力を武器に、相手を論破しようとしてくるのが特徴です。彼らはそのバイタリティとは裏腹に、鬱屈した感情を抱え込んでいるようにも見えます。

 今回はそんな団塊モンスターの事例を紹介しましょう。

「孫が泣いている」状況が何よりも許せない高齢男性
 「孫に何かあったらどうするんだ!責任者を出せ!」

 突然、一人の高齢男性が病院の待合室で大声を張り上げました。その横では、泣きべそをかく幼児を母親らしき女性があやしていました。職員があわてて駆け付け、「大丈夫ですか?」と声を掛けたものの、高齢男性は顔を真っ赤にしながら、「大丈夫なわけないだろう、こんなに泣いているじゃないか!」と職員を叱責しました。

 子どもは足をばたつかせて遊んでいるうちに、椅子から転げ落ちたようです。一見したところ外傷はなく、高齢男性が職員を叱責しているうちに泣き止んでいました。それにもかかわらず、高齢男性は掴みかからんばかりの剣幕。若い職員はおろおろするばかりで、最悪の場合は職員に殴り掛かって警察沙汰になることも頭をかすめたといいます。

 なぜ高齢男性はここまで怒りをあらわにしたのでしょうか。

 高齢男性はしばらく会っていない孫がかぜを引いたため、不安がる娘に同行して病院に来ていました。頼りにされた充実感があったのでしょう。それだけに、自分がいながら孫が泣くような事態になったこと、受付のおろおろとした対応が許せなかったのです。

 この高齢男性は、「困った患者」の典型ですが、彼の心も寂しさでいっぱいなのです。仕事をリタイアし、自分の存在価値を他人に認めてほしくても、認めてもらえない。家族に話を聞いてもらいたくても、忙しい現役世代からは、愚痴っぽい話は敬遠されてしまいます。その満たされない思いの代償を、病院の職員に求めていたのでしょう。

 とにかく「孫が泣いた」という事実が何より許しがたかったのです。

著者プロフィール

援川聡(エンゴシステム代表取締役)えんかわ さとる氏●1979年大阪府警察に入職。1995年大手流通企業に転職し、渉外担当としてトラブルや悪質クレームの対応に当たる。2002年に(株)エンゴシステムを設立し、企業や医療機関などの危機管理をサポート。著書に『クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など。

連載の紹介

援川聡の「クレーム対応の勘所」
テレビやインターネットで得た知識を基に医師の診療方針に意見したり、待ち時間の長さや医療従事者の態度などに気に入らないことがあると文句を言って理不尽な要求をする「困った患者」。そんなクレーマー患者やその予備軍への適切な対応の勘所を、クレーム対応コンサルタントである援川氏が伝授します。

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