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連載第19回
待機時間とトリアージ

2006/04/28

 現在、私はロンドンの中心部から電車で20~30分ほどの郊外に住んでいる。毎日電車に乗って通っているのだが、この、電車がしょっちゅう遅れる。2日に1度は「申し訳ありませんが、○○時発の電車は○○分遅れております。」というアナウンスが流れる。ひどいときには勝手に電車の運行が中止されてしまう。職場に遅刻しても「電車が・・・」といえば、みな苦労しているのでだいたい許される。

 面白いのは、遅れの原因だ。最も多いのは「信号や電気系統の故障」だが、傑作なのは「運転士が現れなかったため、運行を中止しました」というもの。正確な運行で定評があった英国鉄道も、今では笑い話のネタになってしまっている。

 笑い話の素材という点では医療もひけをとらない。診療の「待機時間」に関しては特に悪名が高い。通常の診療は予約制なので、何時間も待たされるということはないが、問題は救急外来での待ち時間と、手術の待機リストである。

 以前にも取り上げたが、英国では、救急外来を受診しても何時間も待たされるということがままある。これについては、現保健医療改革により、4時間を上限とするように様々な工夫が各救急外来に取り入れられ、国民医療サービスのWebサイトにも各トラストの運営する救急外来の平均待ち時間が公開されているので、かなり短縮されてきていると聞く。

 手術に関しても、患者の状態や手術の種類によっては、年単位の待機時間があったとようだが、これに関しても手術のできる医師を増員したり、トラストによっては海外(フランスやインド)で手術をしてもらうといった工夫をすることでずいぶん短縮したと聞く。

 しかしながら、この待機時間については、英国と日本における救急医療体制の基本的な違いや現場における状態についての認識なしに議論されているようだ。表面的な待機時間ばかりが取り上げられることが多い。

著者プロフィール

森 臨太郎(英国国立母子保健共同研究所リサーチフェロー)●もり りんたろう氏。1970年神戸生まれ。医学博士、英国小児科専門医。日本での小児科研修を経て、豪州にて新生児医療に携わり、英国にて疫学を修める。

連載の紹介

英国医療事情
英国で英国立医療技術評価機構(NICE)の診療ガイドライン作成に携わっている筆者が、疫学研究から政策立案、日常診療に至るまで、様々な視点で英国医療と現政権の保健医療改革をリポートします。

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