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号外
臨床試験の安全性
治験薬TG1412による重篤な副反応について

2006/03/20

 英国では連日、治験薬TG1412による重篤な副反応に関する報道が新聞やテレビを賑わせている(写真)。日本ではインターネットのニュース記事を見る限り、あまり報道されていないようだが、場合によっては臨床試験のあり方を考え直す機会になるかもしれないので、ぜひ紹介しようと思い、報告する。

 事件は2006年3月13日、ロンドン北西の郊外にあるノースウィック・パーク病院構内、Parexel社という米国企業が運営している治験専用病棟で起きた。この病棟では、ドイツの製薬企業TeGenero社が開発した「TG1412」と呼ばれる薬の臨床試験が行われていた。

 このTG1412はモノクローナル抗体で、免疫細胞を活性化させることにより効果を得る。慢性関節リウマチや白血病向けの抗炎症薬として開発された。こういった形態の薬は、今回のものが目新しいわけではなく、認可を受けて問題なく使用されているものもすでにある。

 臨床試験に参加していた健康ボランティア8人のうち、この薬を投与された6人全員が投与直後から苦しみ始め、病棟は地獄の様な状況になったと報告されている。残りの2人はプラセボを投与されていたので問題なかった。6人は多臓器不全という病名で集中治療室で治療を受けているが、うち2人はかなり重篤で、顔が3倍にも腫れ上がり、「エレファントマンのようになった」というガールフレンドの言葉とともに英国のすべての新聞の1面に載った。

著者プロフィール

森 臨太郎(英国国立母子保健共同研究所リサーチフェロー)●もり りんたろう氏。1970年神戸生まれ。医学博士、英国小児科専門医。日本での小児科研修を経て、豪州にて新生児医療に携わり、英国にて疫学を修める。

連載の紹介

英国医療事情
英国で英国立医療技術評価機構(NICE)の診療ガイドライン作成に携わっている筆者が、疫学研究から政策立案、日常診療に至るまで、様々な視点で英国医療と現政権の保健医療改革をリポートします。

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