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【連載第9回】
医者には良い格好を見せる患者も

2007/08/20

 72歳の女性が、胃部不快症状と12kgの体重減少を訴えて来院した。

 問診したところ、「体重減少は最近3カ月で起きたが、それまで年2~3回、近医で胃薬を処方された程度で、ここまで調子が悪くなったことはない。自分ではあまり心配してないが、家族が『何か悪い病気があるかも知れないから、大きな病院に行け』というから受診した」という。

 私もまず消化器系の悪性疾患を疑い、上下消化管内視鏡、CT検査などをしたが異常は見付からなかった(ある意味、予想外ではあったが…)。さらに甲状腺機能を含め、その他の採血検査、また婦人科系の異常所見もなかった。

 患者の生活環境を聞いても特に問題はなく、表情も明るい。「友人の母親の介護をしていて、日々忙しい。娘がいるが、既に結婚していて、かわいい孫もいる」という。念のため、うつスケールを試行したが陰性で、うつ症状という診断にも至らなかった。

 この患者の知人に医師がいて、その医師からの紹介であり、紹介状にも悪性疾患の鑑別が希望だった。経過中、その医師から何回か悪性疾患の存在の有無を確認してくるほどだったが、全く治療対象となる異常が見付からず、打開策もなく非常に困ってしまった。さらに、「あの医者じゃ病気は見付けられないのではないか」と家族にも言われているようなことも患者が匂わし、八方ふさがりの状態だった。

著者プロフィール

海老原良典(松翁会診療所)●えびはら よしのり氏。1985年慶応大医学部卒、89年同大老人内科入局。93年カナダ・ウエスタンオンタリオ大留学、96年慶大医老年内科助手。06年松翁会診療所(東京都千代田区)勤務。

連載の紹介

【臨床講座】うつ病―内科医の私の経験
心身症や仮面うつ病の患者も、最初は身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診するのが一般的。筆者が経験した症例を基に、プライマリケアを担う内科医が経験しがちなうつ状態に関する診療ポイントを紹介します。

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