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【連載第7回】
機能的異常の陰に潜むうつ

2007/08/06

 咽頭痛咳嗽発熱(37.6℃)を訴えて37歳の会社員男性が受診した。

 初診時に咳嗽が強く、痰も認めたため、肺炎の除外診断の目的でX線撮影をしたが、異常は見られなかった。しかし肺野で喘鳴が聴取され気管支炎と診断し、抗菌薬、気管支拡張薬、麻薬性鎮咳薬を含めた処方をした。

 しかし1週間後、「熱は下がったものの、咳症状が改善しない」と再来院した。経過中発熱のエピソードはなく、難治性のいわゆる咳喘息を疑い、前記処方に吸入ステロイド薬を追加してみた。1度は改善したものの、再び悪化したということで、2週間後に心配した妻と一緒に来院した。

 咳が強いと訴える割には、待合室、診察室ではあまり症状がなく、改善したように感じられた。そのため、症状増悪時の状況を問診したところ、妻から「会社にいる時にひどくなる。また、会社の人と電話をするとひどくなる」という情報が得られた。念のため、さらに詳しく聞いたところ、部署異動により会社での人間関係に関するストレスが強くなっていたことが分かった。

 そのため、うつの症状を疑い、それまでの処方に選択的セロトニン再吸収阻害薬SSRI)を加えることを考え、患者に「この症状は、ストレスから来ている可能性が非常に高いです。うつ病の治療にも使われる薬が効果的かも知れません」と説明した。しかし、患者本人は「そのような薬を服用するのは抵抗がある」と言って、SSRIの服薬を拒否したため、短時間型の抗不安薬クロチアゼパム(商品名:リーゼ)2錠/日を追加した。

 すると次の受診時には、「症状は、薬を飲んで3日間で良くなった」と、満足の様子だった。

著者プロフィール

海老原良典(松翁会診療所)●えびはら よしのり氏。1985年慶応大医学部卒、89年同大老人内科入局。93年カナダ・ウエスタンオンタリオ大留学、96年慶大医老年内科助手。06年松翁会診療所(東京都千代田区)勤務。

連載の紹介

【臨床講座】うつ病―内科医の私の経験
心身症や仮面うつ病の患者も、最初は身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診するのが一般的。筆者が経験した症例を基に、プライマリケアを担う内科医が経験しがちなうつ状態に関する診療ポイントを紹介します。

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