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【連載第5回】
問診で性格に関する情報を得よう

2007/07/23

 23歳の女性が、2~3カ月続く心窩部不快感にて来院した。診察では心窩部痛など腹部所見はなかった。食欲は低下していたが、体重減少は2カ月で1kg程度。既に他院でH2ブロッカー、胃粘膜保護薬、機能改善薬が処方されていたが、あまり効果がないと訴えて来院した。

 この症例への内科医としての対処としては、(1)胃カメラか胃バリウム造影の検査を申し込む、(2)処方を変更する、(3)同じ処方を続けてもらう、(4)消化器専門医を紹介する、などがあるかと思う。

 しかし、これらの対処をする前に、少し本人の話を聞いて見ることにした。すると、最初は「今年から、新入社員として企業に勤めている。仕事はそれほどきつくない。しっかり仕事はこなしている自信がある」と前向きに話していたが、その後、「職場の人間関係に悩んでいる。寝付きが悪く、朝早く目覚めてしまう」と話し始めたのだ。また自分の性格について、「几帳面でまじめ、他人への気配りもよくすると思う」と語った。

 表情にあまり笑顔が見られないことから(50歳近い私に、20歳代の女性はあまり笑顔を見せないかもしれないが…)、うつ症状を疑いSRQ-D(Self-Rating Questionnaire For Depression)うつスケールを試したところ、結果は陽性だった。

 そのため、「少しストレスが貯まっていますね。特に胃という臓器は、『緊張して胃が痛くなる』とも言われるように、ストレスにすぐにやられてしまいますから。憂うつな状態から、一歩進んで少し軽いうつ傾向にあるみたいです」と、うつ傾向であることを伝えた。すると患者は、「今後、休職しようかと思う。転職も考える」というのだ。

 うつ傾向であることと同時に、選択的セロトニン再吸収阻害薬SSRI)について副作用を含め説明し、同意が得られたため、SSRIのパロキセチン(商品名:パキシル)10mgを処方した。特にこの症例は、身体症状として消化器症状があるため、SSRIの使用を躊躇したが、胃もたれ、胃部膨満などがなく胃機能改善薬の併用で対処できると考え、セロトニン受容体作動薬モサプリド(商品名:ガスモチン)3錠/日も処方した。

著者プロフィール

海老原良典(松翁会診療所)●えびはら よしのり氏。1985年慶応大医学部卒、89年同大老人内科入局。93年カナダ・ウエスタンオンタリオ大留学、96年慶大医老年内科助手。06年松翁会診療所(東京都千代田区)勤務。

連載の紹介

【臨床講座】うつ病―内科医の私の経験
心身症や仮面うつ病の患者も、最初は身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診するのが一般的。筆者が経験した症例を基に、プライマリケアを担う内科医が経験しがちなうつ状態に関する診療ポイントを紹介します。

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