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【連載第4回】
慢性疾患に併発するうつ病を見逃すな

2007/07/16

 この連載をお読みの先生方も、患者から「先生の顔を見たら治ってしまった」といわれたことがあると思う。この言葉が示すように、疾患は必ず精神的な要素を含んでいる。

 誰しもけがをしたり、一過性の病気になると、気分が滅入ることが多いだろう。ましてや慢性疾患などで、なかなか治癒しないという状態であれば、私自身も通常の精神状態を維持できるかは自信がない。

 糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、癌などの患者の15~60%がうつ状態にあるという報告があるように、病気がうつ状態を作り出す。またその反対に、「病は気から」といわれるように、精神的な問題が病気を作り出す。肉体と精神的疾患は表裏一体なのだ。

 従って、患者からの訴えに対して、検査上では何も異常がなくても、「どこにも異常はありません。気のせいでしょう」「ストレスですね。体を動かしてストレスを発散してください」というだけでは、解決には至らない。病気の原因あるいは結果である、うつ病を臨床医がきちんと診断し治療することは、とても重要ではないだろうか。

 63歳の男性が、息苦しさが消えないという訴えで外来を訪れた。カルテを見ると、気管支喘息で呼吸器科、胃潰瘍で消化器科、糖尿病で内分泌科、といずれも同院の診療科に通院中であった。実際、ピークフローも異常値を示したときもあったようだが、現在は息苦しいという訴えがあるものの、ピークフローは正常値を示し、喘息自体は落ち着いているようだった。血液ガスの検査値も正常値で、肺野において若干の喘鳴は聴取されたが、苦しい症状に直接結び付かない状態だった。そのため、いずれの科においても「息苦しい」という症状に対しては対処がなされず、そのまま経過を見ていたようだ。

 また糖尿病もコントロールが悪いということもなく、多剤併用しているものの、まあまあのデータを示していた。胃潰瘍も現在は瘢痕程度で、それが原因となる症状はない思われた。

著者プロフィール

海老原良典(松翁会診療所)●えびはら よしのり氏。1985年慶応大医学部卒、89年同大老人内科入局。93年カナダ・ウエスタンオンタリオ大留学、96年慶大医老年内科助手。06年松翁会診療所(東京都千代田区)勤務。

連載の紹介

【臨床講座】うつ病―内科医の私の経験
心身症や仮面うつ病の患者も、最初は身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診するのが一般的。筆者が経験した症例を基に、プライマリケアを担う内科医が経験しがちなうつ状態に関する診療ポイントを紹介します。

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