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【連載第3回】
どんな時にうつ状態を鑑別に入れるべきか

2007/07/09

 67歳の女性がめまい、後頭部しびれ全身倦怠感、顔のほてりを訴えて受診した。来院前に、同じ大学病院内の神経内科、脳外科、耳鼻科を既に受診していたが各々異常は見付からず、自律神経失調症と診断され、経過を見ていたという。

 紹介状とともに持参した採血結果を見ても異常はなく、各専門科での精査で異常が見付からなかったこと、また症状の出現や強度があいまいなことから、仮面うつ状態を疑い、家庭のことなどについて少し話を聞いた。

 すると、38歳の1人息子がまだ独身で同居しているが、全く結婚する気がなく心配していることが分かった。息子が結婚するまでは、私が元気でいなくてはいけない、育て方を間違ったのかもしれない、などと、私が質問した以上に話し始め、「先生は何歳で結婚されたのですか?」と質問するほどだった。加えて、夫は退職後に趣味に凝り出して、あまり相談相手になってくれない、と不満を持っていた。

 そこでストレステストと称してSRQ-D(Self-Rating Questionnaire For Depression)うつスケールを用いたところ、結果は陽性だった。本人は器質的疾患だと考えているので「息子さんのことでストレスが多いみたいですね。もっと気楽に考えましょう。少しストレスを和らげるために薬を使ってみたらいかがでしょうか?」と話をし、本人の同意を得てから、選択的セロトニン再吸収阻害薬SSRI)のパロキセチン(商品名:パキシル)20mg/日を処方した。SSRIの副作用である胃部不快感症状を考え、セロトニン受容体作動薬モサプリド(商品名:ガスモチン、5mg錠)3錠/日も併用することにした。

 3週間後に再び来院したときは、全身倦怠感はなくなり、めまいと後頭部しびれも半分程度に減少していた。さらにパロキセチンを30mg/日に増量したところ、6週後には顔のほてりが少し残っているが、気にならない程度にまで改善した。息子さんの状況は変わらないものの、以前ほど心配しなくなったとのことだった。

著者プロフィール

海老原良典(松翁会診療所)●えびはら よしのり氏。1985年慶応大医学部卒、89年同大老人内科入局。93年カナダ・ウエスタンオンタリオ大留学、96年慶大医老年内科助手。06年松翁会診療所(東京都千代田区)勤務。

連載の紹介

【臨床講座】うつ病―内科医の私の経験
心身症や仮面うつ病の患者も、最初は身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診するのが一般的。筆者が経験した症例を基に、プライマリケアを担う内科医が経験しがちなうつ状態に関する診療ポイントを紹介します。

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