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【新薬】モルヌピラビル(ラゲブリオ)
COVID-19に対する初の経口抗ウイルス薬

2022/01/28
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年12月24日、抗ウイルス薬のモルヌピラビル(商品名ラゲブリオカプセル200mg)が特例承認された。適応はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による感染症、用法用量は「18歳以上の患者に1回800mgを1日2回、5日間投与」となっている。

 新型コロナウイルス感染症は、世界保健機関(WHO)ではCOVID-19と称しており、日本では感染症法で新型コロナウイルス感染症として指定感染症及び検疫法に基づく検疫感染症に指定されている。2022年1月現在、全世界で累計3億人以上が罹患している。

 主な伝播様式としては、感染者から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾルの吸入が主要感染経路と考えられており、潜伏期は1~14日間であり、曝露から5日程度で発症することが多く、発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっている。患者の主な症状としては、発熱、咳、咳以外の急性呼吸器症状および重篤な肺炎が報告されている。

 現在、COVID-19に対しては、感染および重症化予防の目的でワクチン(mRNA、ウイルスベクター)接種が全世界で行われているが、治療薬に関してはいまだ多くの薬剤が開発段階であり、選択肢が限られているのが現状である。

 現在、日本でCOVID-19に対しては、既存のステロイドのデキサメタゾン(デカドロンオルガドロン他)などが対症療法薬として使用されている以外に、COVID-19に特化したRNAポリメラーゼ阻害薬のレムデシビル(ベクルリー)が保険適用され、さらに中和抗体薬のカシリビマブ(遺伝子組換え)・イムデビマブ(遺伝子組換え)(ロナプリーブ)およびソトロビマブ(遺伝子組換え)(ゼビュディ)が特例承認されている。しかし、これらはいずれも入院が必要な注射薬であることから、簡便な経口薬の開発・承認が熱望されていた。

 モルヌピラビルは、日本初となるCOVID-19(重症化リスク因子がある軽症~中等症Ⅰ)に対する経口抗ウイルス薬である。本薬はプロドラッグであり、生体内で加水分解されN-ヒドロキシシチジン(NHC)となり、細胞内でリン酸化されN₋ヒドロキシシチジン5’‐三リン酸(NHC-TP)となる。NHC-TPはSARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼの基質となり、ウイルス複製過程で新たに合成されるウイルスゲノムの変異割合を増加させ、ウイルス複製を阻害するRNAポリメラーゼ阻害薬である。日本人を含む18歳以上のSARS-CoV-2による感染症患者を対象とした国際共同第II/III相試験(MOVe-OUT[002]試験)において、プラセボ群と比較して本薬の有効性および安全性が確認された。

 副作用としては、下痢、悪心、浮動性めまい、頭痛(各1%以上5%未満)などが報告されているが、特例承認時までの治験症例が極めて限られていることから医薬品リスク管理計画(RMP)では骨髄抑制、催奇形性が重要な潜在的リスクとして注意喚起されている。

 薬剤使用に関しては、下記の事項について事前に十分留意しておく必要がある。

●現状では、安定的な入手が可能となるまで一般流通は行われず、厚生労働省が薬剤を所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼に基づき、無償で譲渡される。詳細は、「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について」を参照すること

●臨床試験における主な投与知見を踏まえ、また、最新のガイドラインを参考にCOVID-19の重症化リスク因子を有するなど、本薬の投与が必要と考えられる患者に投与すること

●臨床試験において、症状発現から6日以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータが得られていないことから、症状が発現してから速やかに投与を開始すること

●動物での非臨床毒性試験から、胎児の体重減少、流産、奇形などの影響が報告されており、妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌であること

●有効性、安全性、品質に係る情報が限られ、現在、引き続き情報を収集中での特例承認したものであることから、あらかじめ患者または代諾者に、その旨ならびに有効性および安全性に関する情報を十分に説明し、文書による同意を得てから投与すること

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