
1ドル130円という、20年ぶりの円安がやってきました。私の投資歴はまだ15年くらいということで、「経験したことのない円安」です。どのように資産を守る行動を取ればいいのか、てんやわんやしております。
為替に慣れている人ならご存じだと思いますが、円安と円高についてまず基本をおさらいしておきましょう。
円安というのは、他の通貨と比べて円の価値が安くなっていることです。円の価値が安いから円安。分かりやすいですね。反対に、他の通貨と比べて円の価値が高くなっているのが円高です。
例えば1ドル70円から140円まで円安が進むとどうなるでしょうか。自分の持っている現金の価値は「対外資産的に半減する」というイメージです。円安になっても、国内の原材料から作られ、流通するモノの価格にはそれほど影響しませんが、輸入して入ってくるモノに関しては大きく値上がりします(単純に考えれば2倍です)。結果的に、自分の現金で買えるものが減ってしまうわけですから、あなたの現金の価値が半減するのです。もちろんドルの価値も常に変動していますし、流通コストなども勘案すれば、そこまで単純な話にはなりませんが。
一方、金やジュエリーなどの現物資産(対を成すのが現金や株などの「金融資産」)は、地政学的リスクや為替変動の影響を受けにくい資産だといえます(ただし、リセールバリューも考えましょう:「プレゼントされるなら宝石? 貴金属?」)。私は全資産の5%ほどを金・プラチナなどの現物資産に変えています。特に金は「有事の安全資産」と呼ばれ、世界情勢が危うい状況で価格が上昇するなどリスク回避にはもってこいの資産ですから、一定量を保有しておくことをお勧めします。「バブルなのか」というくらい株価指数が高く、景気が良いときには逆に金の価格は上がりにくいので、そういうタイミングを狙って買うのがよいでしょう。
円安と円高のメリット・デメリットを表1にまとめます。円安のメリットとしてこのほかによく言われるのが、「インバウンド消費が増える」ということですよね。ただ、このコロナ禍で訪日客が途絶え、その効果は今はゼロに近い状況です(こうした事情もあって、政府は6月にも海外からの観光客の入国制限を緩和しようとしています)。また、多くの日本企業は近年、生産拠点の海外シフトを進めてきました。コロナ禍のサプライチェーン混乱によって部品不足が起きたことも手伝ってか、円安にもかかわらず日本からの輸出数量は伸び悩んでいるのが現状です。そういうわけで、「輸出産業の業績が伸びる」という円安のメリットも最近はやや怪しくなっています。

表1 円安と円高のメリット・デメリット(筆者作成)