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判例解説●福岡高裁2010年9月16日判決
「爪剥がし事件」で逆転無罪、正当な医療行為と認定

2017/08/21
水澤 亜紀子=医師・弁護士(新伝馬法律事務所)

入院中の高齢者の爪を無理に剥がしたとして看護師が逮捕・起訴され、一審で有罪判決を受けました。これに対して控訴審で裁判所は、看護師の行為は正当で傷害罪には当たらないと判断し、無罪を言い渡しました。

事件の概要

 被告人は、民間病院で勤務していた看護師である。2007年6月11日、同病院で脳梗塞などの治療のために入院していた患者A(当時89歳)に対し、被告人は右足親指の爪床から浮いた爪の部分を、爪切りニッパーで4分の3から3分の2除去した。Aの爪床に軽度の出血が生じた。

 また同15日にはクモ膜下出血の後遺症で入院中の患者B(当時70歳)に対し、根元部分のみが生着して剥がれかかっていた右足中指の爪を、絆創膏ごとつまんで取り去った。指には軽度の出血が生じた。また、肥厚して変色した右足親指の爪を爪切りニッパーで指先より深く約8割切除し、指に軽度の出血が生じた。

 この行為が院内で問題となり、同25日、病院は緊急記者会見を開き、病棟の責任者である被告人が6月8日から15日にかけて、入院中の高齢者4人の足の爪を剥がしていたと公表。「あってはならないことが起きた。患者や家族にお詫びしたい」と謝罪した。4人の患者はいずれも認知症の症状があったとした。

 翌26日、病院は傷害容疑で被告人を所轄警察署に刑事告発した。警察当局は7月2日、このうちBへの行為について、傷害容疑で逮捕した。病院側は逮捕後、被告人を懲戒解雇。また、被告人が以前受け持っていた病棟でも3人の患者の爪を剥がした疑いがあることを明らかにした。

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