日経メディカルのロゴ画像

判例解説●仙台地裁2010年9月30日判決
パイプカット術後に妻が妊娠、医師に賠償命令

2016/06/22
水澤 亜紀子=医師・弁護士(新伝馬法律事務所)

 精管結紮術を受けた男性の妻が妊娠しました。男性は医師の説明から妻の不貞を強く疑いましたが、DNA検査で男性自身の子であることが判明。夫婦は医師を提訴し、裁判所は医師の説明義務違反を認定しました。

事件の概要

 夫Aと妻Bは2人の子を持つ夫婦。Bは生活のため働く必要があったほか、これまで二度帝王切開していた。これらを考慮し、Aは今後子をつくらないよう断種治療を受けることにした。

 AはX医師が経営する泌尿器科専門クリニックを受診し、精管結紮術を受けた。しかし、手術から約1年8カ月後、Bが妊娠7カ月と判明。AとBがXに説明を求めたところ、Xは「その子は99.9%、Aの子ではない」との趣旨の発言をした。

 この発言により、BはAから不貞を疑われたものの、帝王切開で第3子を出産した。その後のDNA鑑定の結果、Aの子であることが確認された。XはAとBに対し、出産費用や今後の生活費などとして約318万円を支払った。

 AとBはXを相手取り、「手術が医学的に不適切であった」「AがBの不貞行為により妊娠したものと誤解し、AがBに対して暴言を吐いたり殴打するに至った」などとして、手術の過失および説明義務違反を理由に損害賠償を請求した(Aが500万円、Bが1400万円の請求)。

連載の紹介

判例に学ぶ 医療トラブル回避術
日経メディカル誌に連載中の「判例に学ぶ医療トラブル回避術」からの転載です。最近判決が確定した医療関連訴訟を取り上げ、判決文を分かりやすく要約するとともに、裁判官がどうしてその判決を下すに至ったのかの理由や背景を解説します。注目裁判に加え、最近の医療訴訟トレンドを解説した書籍『医療訴訟のここがポイント』(写真)も販売中です。

この記事を読んでいる人におすすめ