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判例解説●奈良地裁2009年4月22日判決
宿日直を通常労働と認定、割増賃金の支払い命じる

2014/03/03

 産科医2人が、宿日直などの勤務でも分娩その他の対応は通常の勤務と変わらないとし、割増賃金の支払いを求めて病院を運営する県を提訴しました。裁判所は、その勤務実態から産科医2人の主張をおおむね認めています。

【執筆】石黒敏洋=弁護士(札幌アライアンス法律事務所)

事件の概要

 原告A、Bは県立病院産婦人科に勤めていた医師。この病院は1~3次救急まで担う基幹病院で、救命救急センターやNICU施設もあるため、県全域ばかりか他県の一部からも救急患者が運ばれてくる。

 2004年1月1日から05年12月31日までの間、産婦人科には原告ら2人を含む5人の医師が勤務していた。正規の勤務時間は月~金曜日の8時30分から17時15分までだったが、県は原告らに交代で宿日直勤務(時間外・休日勤務)を命じていた。宿直は平日・休日を問わず17時15分から翌朝8時30分まで、日直は休日(土日、祝日)の8時30分から17時15分までの勤務である。

 宿直医は病院に宿泊して入院患者や救急患者を診療するが、原告らを含む産科医は宿日直勤務以外にも自主的に「宅直」当番を定め、宿日直医で対応が困難な場合には宅直医が応援に来ていた。

 原告らは、給料のほかに扶養手当、調整手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、月額特殊勤務手当、超過勤務手当、宿日直手当、期末手当、勤勉手当、休日勤務手当を受給していた。

 ところで、県は、職員の勤務時間、休暇などに関する条例で「任命権者は人事委員会の許可を受け、正規の勤務時間以外の時間において職員に規則で定める断続的な勤務を命ずることができる」と規定。その規則には「人事委員会規則で定める断続的な勤務は、次に掲げる勤務とする」とされ、「県立医科大病院または県立病院における入院患者の病状の急変等に対処するための、(県立の医療機関に勤める)医師または歯科医師の当直勤務」も挙げられていた。そして、宿日直手当に関する規則は「その勤務1回につき、2万円の宿日直手当を支給する」としていた。

 こうした状況下で、原告らは県を被告に、(1)産婦人科の性質上、宿日直勤務でも分娩やハイリスク妊娠患者に対する診療、さらに救急外来患者の診療にまで対応しなければならず、通常の勤務と同等の労働が時間外、休日にも行われており、産科医の仕事は労働基準法(労基法)41条3号の監視または断続的労働とはいえず、県の規則は同法に違反し無効である(2)原告らの宿日直および宅直勤務は、その時間すべてが労基法37条1項にいう時間外または休日勤務に当たり、割増賃金の対象となる時間である(3)給料のほかに受給していた諸手当のうち調整手当、初任給調整手当、月額特殊勤務手当、期末手当、勤勉手当、住居手当は労働の対価たる性格を有し、割増賃金の算定の基礎とされなければならない──と訴え、04年1月1日から05年12月31日までの割増賃金として、各自に約4500万~4800万円を払うよう求めた。

連載の紹介

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