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臨床試験の信頼性回復の第一歩に
UMINサービスで症例データレポジトリがスタート

2013/11/29
三和 護=循環器プレミアム

東大医学部附属病院長の門脇孝氏

 東京大学医学部附属病院大学病院医療情報ネットワーク研究センターは11月28日、大学病院医療情報ネットワークUMIN)の新たなサービスとして、すべての研究者が無料で利用できる症例データレポジトリICDRIndividual Case Data Repository)の運用を開始した。記者会見に臨んだ東大医学部附属病院長の門脇孝氏は、「臨床試験の信頼性回復の第一歩にしたい」とコメントした。

 ICDRは、研究者が自ら実施した臨床研究の症例データを匿名化したデータセットの形でUMINサーバに保管し、UMINがその内容を第三者に担保することを目指している。具体的には、(1)臨床研究データの散逸防止と長期保存、(2)臨床研究データの質の担保、(3)論文掲載となった知見以外の新たな結果を得るための統計リソース化、の3つを実現するものだ。

 散逸防止と長期保存の面では、データのバックアップ、セキュリティ保護を実現することで、長期にわたるデータ解析を可能とする。質の担保の面では、例えば相互チェックや査察のための正本の提供も可能となる。また、統計リソース化の面では、臨床研究データの再解析あるいはメタアナリシスなどのために登録データを活用できる道が開かれることになる。

 UMINでは既に臨床試験登録システムを運用している。これは、臨床研究計画の概要を研究スタート前に第三者機関に登録し、ネット上で公開するもの。日本ではUMIN以外に、JAPIC臨床試験登録システム、日本医師会臨床試験登録システムが稼働している。UMINでは大学などの研究機関が実施する臨床研究を、JAPICでは製薬会社主導の治験を、日本医師会では医師主導の治験を、それぞれ主な登録対象としている。

 大学病院医療情報ネットワーク研究センター長の木内貴弘氏によると、こうした登録システムにより、出版バイアスの解消、後付統計解析の防止などの面で一定の成果が得られていると指摘した。ちなみに、これまでにUMIN臨床試験登録システムへ登録された研究件数は1万2000件を超えており、2013年度も10月29日時点で1806件と昨年を上回るペースで増えているという。

 ただし、こうした臨床登録システムだけでは、臨床試験データそのものの改ざんやねつ造、あるいは研究者や研究資金提供者に不利な統計解析結果の隠ぺい、などといった問題は解決できないとも指摘。このため、第三者機関で臨床研究症例のデータセットを保管し、第三者に対してデータセットへのアクセスを可能とする公的な仕組みが必要と考え、ICDRの構築に至ったと語った。

 ICDRはUMINセンター、東大病院臨床研究支援センター、東大大学院臨床疫学研究システム学講座の三者が企画、設計にあたった。システムの開発はUMINが行い、保守と運用も手がける。11月28日の記者会見では、同日に第1例目の臨床研究として、「ピタバスタチンの耐糖能異常者に対する糖尿病発症予防試験(J-PREDICT)」(責任研究者;門脇氏)のデータセットが登録されたことも発表された。

 こうした症例データレポジトリは、FDAやNIHなどが構築している。ただし、それぞれ製薬会社の治験用あるいは研究費を提供している臨床研究を対象としており、今回のICDRのように、すべての研究に門戸を開いているのは、世界初だという。

 今後は、東京大学医学部附属病院から他の医療機関への普及を図る一方、国などに公的資金による臨床研究のICDRへの登録推奨あるいは登録義務化を働き掛けていく方針も示された。また学会や学術雑誌に対しては、臨床試験に関する論文の学術雑誌の査読にあっては、ICDRへの登録推奨あるいは登録義務化を求めていくことも表明された。なお、当面の運用については、後述するQ&Aにまとめた(次ページへ)。

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