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第9回
正確な呼吸機能検査には気合いが大切
努力性肺活量や1秒量は一発勝負!

 呼吸機能検査は、呼吸器疾患の診断鑑別だけでなく、手術の適応や神経難病の予後予測などの生命に直結する重要な検査の1つです。測定機器の自動化が進んだので、単に結果を出すだけであれば、比較的簡便な操作と技術で実施可能な検査です。しかし、真の測定値を導き出すには、担当する技師の力量だけではなく、患者さんの協力と努力が大切……と言うより最も重要な要素です。

 私は呼吸器に専門特化した病院に長く勤務していたことがあり、何万人という患者さんの呼吸機能検査を経験しています。ですから、この検査に関して、かなり自信を持っておりますが、そんな私でも思ったような結果を出せないことが何度もありました。もちろん、患者さんの病状もあり無理をさせられないので医師と話し合い、妥協点を見据えて行う事もありますが、可能な限り医師の診断に繋がる最良の結果を出せるようにしていました。

 さて、その最良の結果を出すために検査技師はどんな工夫をしているか? 測定機器の特性を熟知することや疾患の勉強が基本ですが、それ以外にも、先達の工夫を取り入れることが重要です。測定法の手順などは、参考書にも記載されていますが、経験で培ったチョットしたコツなどは、やはり、直接、話しを伺ったり、検査の現場を見学しなければ習得できない技術に思えます。これは、職人さん達が技術を習得するときに、しばしば『技を盗む』と言った表現されるのと似ているかも知れません。呼吸機能検査の結果は職人技の賜のようなものです。

 呼吸機能検査室の前を通る時、かなり大きな声で『はい!大きく息を吸って~、一気に吐いて~』などと聞こえてきたことはありませんか? 耳が遠い患者さんのために、大声を張り上げているわけではありません。声の掛け方で結果が大きく違ってしまう場合があるためです。正確な呼吸機能検査を実施するには、ある程度大きく、そして素早く・鋭く、掛け声を掛けるのが秘訣です。全ての項目で大きな声を出すわけではありませんが、努力性肺活量やフローボリュームカーブなどの単位時間当たりで評価する項目では特に重要です。

 日常生活では深呼吸すら滅多に行いませんから実感が湧かないと思いますが、最大限まで息を吸ったり、その息を一気に吐き出すことは、意外なほど努力を要する動作です。疾病で体力の落ちている患者さんはすぐに疲れてしまいますので、何回もやり直すことはできません。正確な値を測定するためのポイントは、少ない回数で大きな呼吸動作をこなしてもらうことです。そこで自分自身が検査を行うためのモチベーションを高めると同時に、正確な測定の要領を患者さんに伝えるには、気合いを注入するのがコツなのです! 気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだぁ~!と、検査室で叫ぶわけではありませんが、呼吸機能検査では必然的に検査技師の声が大きくなります。

著者プロフィール

様々な組織に所属し多様な業務に従事する臨床検査技師のグループが交替で執筆します。検査にまつわるあらゆる問題について意見交換を重ね、解決策を模索し、経験を積んだ精鋭が揃っています。

連載の紹介

医師の知らない?検査の話
臨床検査に関しての基礎知識や思わぬ落とし穴、多彩なエピソードなど、現場の視点ならではの考え方や発想も含めて、各分野に精通した臨床検査技師が、自身の経験を元にお伝えします。

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