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第6回
双子にまつわる抗体検査結果の謎
抗体陽性の児が正常で、陰性の児が血小板減少の訳は?

 「双生児の片方に新生児血小板減少症(neonatal alloimmune thrombocytopenia;NAIT)が起きました。ところが、発症しなかった新生児の方に抗HPA-4b抗体が検出され、発症した新生児は抗体陰性なのはどういうことでしょうか?」

 当検査室が発行した成績報告書を見たある病院の小児科医から問い合わせが来ました。担当者は面会アポを取り、反応データ、HPAとHLAタイピングのFamilyデータ、関連文献を鞄に積め、問い合わせてきた病院に説明に向かうことにしました。HPAがヒト血小板抗原(human platelet antigen)の略であることは前回ご紹介しました。今回は、抗HPA-4b抗体にまつわる双生児の片方に発症したNAITの抗HPA抗体検査結果の謎についてお話します。

白人にはほとんど検出されないHPA-4b抗原とは
 今回問い合わせのあったHPA-4bは、以前はYuka、Penbと呼ばれていた抗原で血小板糖タンパクの1つであるGPIIIa上に局在しています。日本人の抗原頻度は、HPA-4bが2%、対立抗原のHPA-4aが99%以上、またHPA-4bは韓国人が1.6%で、白人にはほとんど検出されないオリエンタルな抗原です。このHPA-4bの発見は1983年大晦日に東北地方のとある病院の新生児血小板減少性紫斑病(neonatal alloimmune thrombocytopenic purpura;NAITP )を発症した新生児が発端となりました。元・東京大学輸血部教授の柴田洋一先生が自ら考案したMPHA(混合受身凝集法)を用いて検出し、患児の姓からYukaと名付けました。

 抗HPA-4b抗体による新生児血小板減少症は、本邦で61症例確認されており、本邦でのNAITの一番頻度が高い抗体です。また、前回お話ししました抗HPA-3a抗体同様、第1子から発症することがあり、脳内出血を来す重篤症例もあります。この抗体産生について興味深いことは、母親がHLA-A24-B52-DR15のHLAハプロタイプを有する場合が多いことです。ハプロタイプとは、HLA抗原のように同一染色体上に近接した距離で複数の遺伝子座が連鎖しているために組換えが起こりにくく、組換えを起こさずに遺伝する対立遺伝子(アリル)の並びのことです。そしてHLAはハプロタイプで遺伝するため、連鎖不平衡が生じ、ある病気の疾患感受性遺伝子がある特定のHLA遺伝子と近接して位置するために疾患感受性遺伝子がHLAの領域内にあると推定されています。また、HLA遺伝子そのものが、疾患感受性を決定している場合もあります。

著者プロフィール

様々な組織に所属し多様な業務に従事する臨床検査技師のグループが交替で執筆します。検査にまつわるあらゆる問題について意見交換を重ね、解決策を模索し、経験を積んだ精鋭が揃っています。

連載の紹介

医師の知らない?検査の話
臨床検査に関しての基礎知識や思わぬ落とし穴、多彩なエピソードなど、現場の視点ならではの考え方や発想も含めて、各分野に精通した臨床検査技師が、自身の経験を元にお伝えします。

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