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【連載第16回・日経メディカル Cadetto連動企画】
対応が遅れ植物状態に、その患者から得た教訓
札幌医大地域医療総合医学教授 山本 和利氏

2007/06/18

1978年自治医大1期生として卒業後、静岡県内で7年間地域医療に携わる。自治医大総合医学第一講座講師、京大総合診療部講師などを経て、99年から現職。

 地域医療を中心に約30年臨床に携わってきたが、これまでに「一番過酷だった」という印象がある患者さんを紹介しよう。

 今から10年以上前、私が設立間もない京大総合診療部の講師を務めていたときのことだ。ある日、1年以上も複数の医療機関を転々としていた20歳代の男性が不明熱で外来を訪れた。経口ステロイド薬で熱は抑えられており、自分で歩いてきたのだった。

 精査・加療目的で総合診療部の病床に入院してもらい、いったんステロイド薬を中止した。検査から同薬の影響を排除するため、また患者さんはB型肝炎ウイルスのキャリアであり、悪化する懸念があったからだ。

 画像診断や血液検査などを行ったが、容易には原因は分からなかった。それどころか容体は徐々に悪化し、腹水がたまり、肝機能や呼吸機能が悪くなり、ICUに受け入れを依頼した。入院から数日が経過した午前11時ごろだったと思う。ところが満床のためか「午後にしてほしい」との返事だった。

 そうしたやり取りの間も容体は悪化する一方で、気管挿管と心臓マッサージを実施した。しかし、ICUに引き継いだときには一命は取り留めたものの、ほぼ植物状態になってしまった。 

 その後、亡くなるまでの2年間、日々、栄養管理や褥瘡対策、拘縮予防に追われた。貧血を起こしたり、MRSAをはじめ各種感染症にかかり、水頭症を来しシャント手術を行い、最後には慢性腎不全に陥った。

連載の紹介

苦いカルテ・幸せのカルテ
医師であれば、苦い思い、あるいは心の残るエピソードを体験されていると思います。これらの貴重な体験は、他の医師の教訓として生かすことができ、多くの医師の心の支えになるものと考えられます。「苦いカルテ・幸せのカルテ」は、こうした体験談を医師会員の皆様から募集、掲載していく企画です。

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