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【連載第11回・日経メディカル Cadetto連動企画】
5000例の心臓手術、その原点
心臓血管研究所(東京都港区)スーパーバイザー 須磨 久善氏

2007/06/01

1974年大阪医大卒。湘南鎌倉総合病院、葉山ハートセンターなどを経て2005年4月から現職。1996年日本初のバチスタ手術を手がけるなど心臓外科手術の第一人者。

 本当に胸が高鳴り、うれしく、かつ最も緊張した手術――。それは私が初めて術者としてメスを握った手術だ。これまで心臓バイパス手術は3000例以上、心臓外科手術全体では5000例以上を手がけてきた。日本で初めてバチスタ手術を手がけるなど様々な経験をしてきたが、その中でも一番印象に残っている。あの時の思いは、いまだに忘れない。

初めての手術の不安と感動
 それは米国留学から帰ってきた直後のことで、私は35歳だった。今ではもっと若いときから術者になれるが、当時では早い方だった。

 患者さんは私の受け持ちで、70歳を超えており、3枝病変の心臓バイパス手術。カンファレンスで手術の方針が決まったものの、そのときは教授か助教授がやるものと思っており、まさか自分が術者になるとは考えていなかった。

 ところが手術の2~3日前のこと、教授から「手術チームのリーダーとしてやれ」と言われた。思わず「やった!とうとう来たか」と一人前の外科医として認められた喜びを感じる一方で、命を預かる責任の重さを痛感した。また3枝病変の手術の難しさもさることながら、患者さんから「お前じゃだめだ、教授にお願いしたい」と言われることが何より不安だった。

連載の紹介

苦いカルテ・幸せのカルテ
医師であれば、苦い思い、あるいは心の残るエピソードを体験されていると思います。これらの貴重な体験は、他の医師の教訓として生かすことができ、多くの医師の心の支えになるものと考えられます。「苦いカルテ・幸せのカルテ」は、こうした体験談を医師会員の皆様から募集、掲載していく企画です。

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