
開業後、地域で開催した講演会の模様。
1990年代後半に私は出身地で開業した。その後、1997年に日本動脈硬化学会のガイドラインが発行されたが、女性の高コレステロール血症に対する考え方に疑問を持った。特に問題だと思ったのは、男性より女性の方がコレステロールが高いというだけで、多くの女性にスタチンが使われることだ。
米国のガイドラインでは総コレステロールやLDLコレステロール以外にHDLコレステロールを定量的に評価している。したがって、HDLコレステロールが高ければ治療対象にならない。EBMが医学的な考え方のベースになりつつある時代に、日本だけが取り残される不安を感じ、臨床現場からマスコミなどを通じて発言した。そのせいか、遠方から受診される方や、新聞や雑誌などの記事を読んで電話をくださる方がいる。
ある日、「新聞の記事を読みました」と、東京の主婦から電話があった。この方は、その3年前に書いた記事の中から「主婦Bさん、数値280、主治医:内科医田中先生は治療せず経過を見ている。心筋梗塞の心配は少ない」という部分を引用し、手紙を書いて送ってこられた。主治医が「コレステロール値が高いので、低下させる薬を出します」と言ったことなど、今回のきっかけになった主治医とのやりとりに加え、めまいや動悸という女性に多い症状に悩んでいることが、4枚の便箋にびっしり書かれていた。