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【連載第2回】
血液透析の必要性を患者に説得できず
船橋市立医療センター(千葉県船橋市)内科外来部長 岩岡 秀明氏

2007/04/03

 浅学菲才の身ですので、「苦いカルテ」というタイトルで思いつく事例は、幾つもありますが、特に強烈な印象に残っている患者さんを書きます。

 私が卒後5年目のころですから、もう20年以上前(1985年ごろ)になります。まだ20歳くらいの1型糖尿病(当時はインスリン依存型糖尿病と呼んでいた)の女性患者さんが、末期腎不全で、当時勤務していた総合病院に来院しました。初診時から、ほぼ失明状態で、自暴自棄になっており、ご家族のフォローも乏しく、近いうちに血液透析が必要となることが想定されました。前医での治療も、今では信じられませんが、1型糖尿病に中間型インスリン(ヒューマリンN)の朝1回注射だったと記憶しています。

 当時は、糖尿病患者さんの透析は非常に成績も悪く、導入をお願いできる病院自体もごく少ない状況でした。私の指導医や看護スタッフも含めて、透析の必要性、そのための転院の必要性を、ご本人・ご家族に何回もお話しましたが、どうしても納得されず、拒否されてしまいました。

 患者さんとご家族を説得できなかった一番大きな理由は、糖尿病専門医を目指していたものの私自身が、透析について、教科書での知識しかなく、その実際については詳しく知らなかったことに尽きると深く反省しています。指導医も含めて、内シャント作成の実際、血液透析とCAPDの利点・欠点、医療費は障害者1級の申請をすれば無料になることなどは、誰も知りませんでした。お恥ずかしい次第です。

連載の紹介

苦いカルテ・幸せのカルテ
医師であれば、苦い思い、あるいは心の残るエピソードを体験されていると思います。これらの貴重な体験は、他の医師の教訓として生かすことができ、多くの医師の心の支えになるものと考えられます。「苦いカルテ・幸せのカルテ」は、こうした体験談を医師会員の皆様から募集、掲載していく企画です。

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