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《第2回》
めまいを診る
たまに症状が出る場合、西洋医薬では副作用が心配なことも

2008/07/09

 めまいを主訴に総合診療科を訪れる患者さんは少なくありません。その多くは、耳鼻咽喉科などで、器質的な疾患の可能性を除外された上で治療を受けています。それでも十分な効果が得られなかったわけですから、総合診療科やかかりつけ医が再度、西洋医学的に対症療法を行っても意味がありません。このような場合に漢方が役立ちますので、試してみてください。

【症例1】
 患者さんは68歳のやや太った女性です。
現病歴:半年前からめまいがときどき起こるため、精密検査を希望し、当院耳鼻科を受診しました。耳鼻科では特に異常を認めず、脳外科に紹介しました。しかしそこでも異常を認めなかったため、総合診療科に紹介されました。立ち上がった時に引き込まれるような感じを数秒間自覚していますが、それ以外の時は、特にめまいを自覚していません。
身体所見:脈拍 66/min 整。血圧112/68 mmHg。低起立性低血圧は認めない。貧血、黄染なし。心肺腹部に異常なし。下腿浮腫なし。
尿・血液検査:異常所見なし。
頭部MRI:異常所見なし。

 西洋医学では、病気を解剖学的・病理学的に分類して診断し、治療法を決定します。“めまい”という症状の場合、内耳脳神経炎症腫瘍などといった病理学的な異常がなければ、治療が始められません。この患者さんは、耳鼻科・脳神経外科で診察・検査し、めまいを来す臓器に病理学的な異常が見いだされなかったために西洋医学的な治療が行えず、総合診療科へ紹介されてきました。

 ここで、耳鼻科や脳神経外科と同様の西洋医学的思考プロセスで診断しようとしては、お手上げです。心療内科的なアプローチを行い、自律神経失調症として抗うつ薬や精神安定剤を処方する選択肢もありますが、この患者さんのように、ときどき症状が出現する場合、治療による食欲不振やふらつきなどの副作用の出現で、逆に患者さんの状態を悪くする心配があります。このような場合、漢方的に評価をして、漢方薬を使った方がよいと思われます。

 西洋医学では、主訴から考えられる疾患を2~3想定しながら、鑑別診断という形で診察・検査を進めていきます。これに対して漢方では、鑑別処方といって、主訴を治療するために処方される方剤を想定しながら診察を行います。「方剤」とは複数の生薬をあらかじめ調合したものを指します。

 漢方非専門医が漢方薬を処方する場合、煎じた生薬を乾燥し、粉剤顆粒にしたエキス剤を用いるのが普通ですし、それほど多くの方剤を使いこなす必要もありません。1つの症状に対して2、3種類の方剤で十分です。処方を決める際には、細かい適応にこだわることなく、先生方が感じた患者さんのイメージと方剤の持つイメージから、相性の良い組み合わせを決めるという感覚で処方します。

 めまいによく用いられる方剤は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)の3剤です。以下に方剤の持つイメージを列挙しますので、これを頭に置きながら漢方的な診察を行います。

補中益気湯:エネルギーの不足から立ち上がった時に血圧が下がり、ふらつくといった人(気虚)に用いる。
半夏白朮天麻湯:身体がむくんでいて、乗り物酔いのような症状の人(水毒)に用いる。
苓桂朮甘湯:イライラしていてのぼせて目が回るといった人(気逆)に用いる。

 これらの3方剤で、コモンディジーズとしてのめまいの大部分に対して対応可能です。これらの処方を試してみて効果がない場合は、漢方の専門家へ紹介しましょう。

著者プロフィール

浅羽 宏一(高知大学医学部附属病院総合診療部)●あさば こういち氏。1992年高知医科大学(現高知大学)卒。同年同大学第二内科入局。04年高知県立安芸病院内科医長を経て、06年4月から現職。

連載の紹介

【臨床講座】日常診療に漢方を使う
日常診療でよくみかける不定愁訴に対し、漢方が最適な選択肢であることがしばしばあります。高知大学附属病院総合診療科の診療方針を基に、プライマリケアの現場で役立つポイントを紹介します。

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