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第1回《はじめに》
不定愁訴にこそ漢方が効く

2008/06/30
浅羽 宏一

 大学病院の総合診療部には、実に様々な訴えの患者さんが来院します。具合が悪いのに、医療機関をいくつ受診しても検査結果は異常なしという患者さんや、色々と治療を受けているのに症状が改善しないという患者さんが、「最後の頼みの綱」といった気持ちで受診してくるようです。

 それだけに、同じような検査を繰り返したり、専門と思われる診療科に次々と紹介するたらい回しをしないためにも、当科では初診時から漢方治療を行っています。漢方では、西洋医療とは全く異なった視点で患者さんを診察・治療しますので、なかなか診断がつかない患者さんには有効なことがあります。

 先日、3カ月前にクルマに乗っていて追突され、頸椎症と診断されて近くの整形外科で治療を受けている64歳の女性が来院しました。この方は、首と肩の痛みが軽減した1カ月ほど前から、鼻の周囲が痛くなり始めました。脳神経外科や耳鼻科での、血液検査MRI検査などでは異常が認められなかったものの、症状は全く改善しないため、当科を受診しました。

 この患者さんには、「曲池(きょくち)」「手三里(てさんり)」「身柱(しんちゅう)」と呼ばれる経穴(つぼ)に対し、円皮鍼による鍼治療を外来で行いました。肩の痛みに対してよく行われる治療です(図1)。鍼治療の約20分後には、症状が3割ほど軽快したと笑顔が見られたため、同じく肩の痛みに対してよく使われる葛根湯を処方しました。

 1週間後に再診した時には、時々痛みを感じるが、症状が気にならないことが多くなったということでした。前回と同じ場所に円皮鍼治療を行い、さらに葛根湯を2週間処方しました。

 私たちはこのような患者さんに対して、西洋医学的な評価を行った後に、積極的に漢方薬や鍼灸の治療を行うようにしています。腰痛を訴える患者さんに鎮痛薬を処方しても、心下部痛や食欲不振で患者さんの苦痛を増やすことがあります。それよりは、漢方薬や鍼灸治療の方が患者さんには優しいと思います。

著者プロフィール

浅羽 宏一(高知大学医学部附属病院総合診療部)●あさば こういち氏。1992年高知医科大学(現高知大学)卒。同年同大学第二内科入局。04年高知県立安芸病院内科医長を経て、06年4月から現職。

連載の紹介

【臨床講座】日常診療に漢方を使う
日常診療でよくみかける不定愁訴に対し、漢方が最適な選択肢であることがしばしばあります。高知大学附属病院総合診療科の診療方針を基に、プライマリケアの現場で役立つポイントを紹介します。

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