日経メディカルのロゴ画像

抗菌薬の適正使用とは何なのか

2018/02/28
具 芳明(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター)

 抗菌薬の適正使用とは、個々の患者に対して最大限の治療効果を導くと同時に、有害事象をできるだけ最小限にとどめ、いち早く感染症治療が完了できる(最適化する)ようにすること1)です。そのためには抗菌薬の必要な病態かどうかを判断するとともに、薬剤の選択、投与量、投与経路、投与期間などを明確に設定する必要があります。

 これまでの研究から抗菌薬適正使用を推進するための手法には様々なものが挙げられており、日常診療ではそれらを単独または複数組み合わせて進めていくことになります。「抗微生物適正使用の手引き第一版」のような治療指針の導入はその基本であり、ぜひ日常診療に活かしていきたいものです。

なぜ、抗菌薬適正使用が注目されるのか  抗菌薬適正使用がここまで強調されるようになった大きな理由は薬剤耐性菌の増加です。永く薬剤耐性菌は病院内で発生する問題と考えられてきました。そのため薬剤耐性菌対策は院内感染対策の枠組みで進められてきたのです。現在でももちろん病院は薬剤耐性菌がしばしば検出される場であり、院内感染対策は極めて重要です。

 しかし、市中での薬剤耐性菌の広がりや発展途上国での薬剤耐性菌の増加、さらには畜産や環境との関連など、病院医療の枠組みでは対応しきれない複雑な状況が21世紀に入った頃から次第に明らかとなってきました。そのため世界保健機関(WHO)は2011年の世界保健デーのテーマに「薬剤耐性菌対策」を取り上げ、2015年にはグローバルアクションプランを発表して世界的な対策の必要性を強く訴えることとなりました。薬剤耐性菌対策には様々な取り組みを組み合わせていく必要がありますが、抗菌薬を適正に使っていくこと、すなわち不必要な使用は行わず、使うのであれば適切に使うことは基本方針の1つとなっています。

 世界的な動きを受けて、日本でも薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが作成されました2)。2016年4月に発表されたアクションプランは、WHOのグローバルアクションプランの構成を基本にしながら多くの取り組みが盛り込まれています。この連載を担当しているAMR臨床リファレンスセンターはAMR対策アクションプランを受けて2017年4月に国立国際医療研究センター病院に設立されたものです。

 日本のアクションプランでも抗菌薬適正使用は重要な柱の1つになっています。過去の研究から、(1)日本における抗菌薬使用の多くを経口薬が占めること、(2)本来抗菌薬投与の必要はないとされる上気道の感染症に対して多くの抗菌薬が処方され、その多くが第3世代セファロスポリン系、マクロライド系、キノロン系であること――が指摘されています。それらを鑑みた抗菌薬使用量の削減目標が示されています(表1)。

著者プロフィール

国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター●薬剤耐性(AMR)アクションプランの臨床現場での実践を目的に、厚生労働省委託事業として2017年4月に設立された。本連載の全体監修は同センター長の大曲貴夫氏が務める。

連載の紹介

かぜ診療での“困った”に答えます
厚生労働省が急性気道感染症などを対象とした「抗微生物薬適正使用の手引き」を発表したこともあり、抗菌薬適正使用への関心が高まっています。日常診療で遭遇するかぜ症状をどう見極めて診療を進めて いくのか、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターのメンバーが解説します。

この記事を読んでいる人におすすめ