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救命治療の拒否と“期間限定トライアル”の提案

2018/09/26
西川 満則(国立長寿医療研究センター病院)

 前回のコラムは「意思決定能力って何」というテーマで、70歳代男性(Hさん)について紹介しました。直近の医療ケアの選択に関する話題から、将来の医療ケアの話に、そして、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)へと変化していく経過を紹介しました。意思決定能力についても考えました。

 あるACPの定義には、「本人が自ら意思決定ができなくなったときに備え、代わりに意思決定を行う信頼できる人を選ぶプロセスも含む」と書かれています。既に意思決定能力が低下していたHさんの事例は、本来のACPと言えない、というご批判もあったかと思います。

 臨床現場では、直近の医療ケア選択とACPは連続しています。意思決定能力も「有」「無」の二択ではなく、連続的でグラデーションのように変化します。そこが重要なポイントでした。

 さて今回は、本人の表明した生命維持治療の差し控えに関するACPと、医療上の有益性が対立した、Aさんの事例を取り上げたいと思います。

 Aさんは、80歳代の男性で、重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)でした。血中二酸化炭素が蓄積することで意識障害に陥りやすい、II型呼吸不全を伴っていました。階段の上り下りも困難でしたが、生活空間のある2階までは何とか移動することができていました。同じ敷地内に住む長男の妻が、時々生活のサポートをしていました。

著者プロフィール

西川満則(国立長寿医療研究センター病院エンド・オブ・ライフ[EOL]ケアチーム医師)●にしかわみつのり氏。1989年岐阜薬科大卒、1995年島根医科大卒、愛知国際病院ホスピス、名古屋大学呼吸器内科を経て、2000年国立長寿医療研究センター着任。2011年より現職。

連載の紹介

アドバンス・ケア・プランニング事始め
患者が望む終末期医療の実現に欠かせないアドバンス・ケア・プランニング(ACP)。とはいえ、ACPとはそもそもどのようなものなのか、疑問に思う医療介護職は少なくないだろう。人生の最終段階におけるケア(エンド・オブ・ライフケア)に詳しい西川氏が、ACPの基本となる考え方を解説する。

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