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事前指示があってもACPが必要な理由

2018/07/09
西川 満則(国立長寿医療研究センター病院)

 アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)という言葉を耳にする機会が多くなりました。厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に、ACPの概念が盛り込まれ、医療・介護現場への普及の方向性が示されたことが、ACP普及の流れに拍車をかけたように思います。

 そういった盛り上がりとは裏腹に、ACPを実践しようとする際、ACPを行うメリットは何か。ACPはいつ、誰が、どのように行うべきか、どのようにACPの会話を切り出したらよいのか。ACPではどんな話をすればよいのか、患者さんの「価値観」「人生の目標」「治療や場所の選好」をどのようにくみ取るのか、などの問題に、多くの医療・介護職が新たな問題に直面していることと思います。

 この連載では、病院のエンド・オブ・ライフケアチームの医師としての経験から、ACPを実践する際に参考になるような事例を紹介していきます。今回は、事前指示(アドバンスディレクティブ)から始まるACPについてです。

 事例は、60歳代女性のCさんです。穏やかな口調の中に強い意思が感じられる方。Cさんは、書面に「過剰な治療は拒否いたします」と筆で記した上に拇印まで押していました。また、代弁者としてご主人の名前も記されていました。

 近年、ACPの普及とともに、事前指示やリビングウィルは駄目で意味がないという人もいますが、それは間違いです。事前指示やリビングウィルをきっかけとして、ACPを進めればいいのです。患者さんの要望を一方的に受ける事前指示やリビングウィルだけではなく、患者さんその人を理解するための会話・対話が必要ということです。

 事前指示があるということは、終末期について患者さんは既に多くのことを考えているわけで、それを拝聴することもACPなのです。そして、その際に注意すべきは、患者さんが医療従事者ではない場合は特に、医学的処置の意味や内容を誤解していることがないかを確認し、誤解があればそれを解いた上で、再度、希望を聴くことかと思います。

著者プロフィール

西川満則(国立長寿医療研究センター病院エンド・オブ・ライフ[EOL]ケアチーム医師)●にしかわみつのり氏。1989年岐阜薬科大卒、1995年島根医科大卒、愛知国際病院ホスピス、名古屋大学呼吸器内科を経て、2000年国立長寿医療研究センター着任。2011年より現職。

連載の紹介

アドバンス・ケア・プランニング事始め
患者が望む終末期医療の実現に欠かせないアドバンス・ケア・プランニング(ACP)。とはいえ、ACPとはそもそもどのようなものなのか、疑問に思う医療介護職は少なくないだろう。人生の最終段階におけるケア(エンド・オブ・ライフケア)に詳しい西川氏が、ACPの基本となる考え方を解説する。

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